[交通]空の混雑解消に日本のAI技術の活用を

Point
急速に進む空の混雑。解消には抜本的な航空管制の変革が必要。
新たな概念に基づく「軌道ベース運用」の実現が変革の鍵となる。
欧米に先んじて、AI技術を活用した航空管制システムの実現に期待。

次世代インフラ事業本部 宝川 修

 「管制塔からの指示により当機は出発を待機します」――。航空機内でこのようなアナウンスを最近よく耳にする。航空機は特性上、空中で速度をゼロにできない。混雑の際は離陸を待たせることで解消を図ることが一般的だ。日本の離着陸便や上空を飛行する機数は1997年以降の20年間で約2倍に増加(年平均約3.4%増)した。訪日旅行客の増加が追い打ちをかけ、国際線を中心に、最近の5年間は年平均約5.6%増に加速。出発待ちを強いられる航空機の数も急増している。

 現時点では管制官が高い技能を発揮し、航空交通ネットワークの破綻を招くような大きな遅延は発生していない。しかし、今以上に交通量が増えると管制官の技能向上だけではカバーしきれない状況となる。このため近年では、空域の見直しや管制システムの高度化などが継続的に行われており、2030年頃までの交通量には対応できる見込みとなっている。一方、2030年以降に見込まれる交通量の増加は、人間が判断できる次元を超えた複雑な運用を管制官に強いると考えられる。

 近い将来予想される「空の大混雑」に向けて、「軌道ベース運用」と呼ばれるドラスチックな変革が求められる*1。管制官には、現在のように航空機に逐一指示を出す役割は求められなくなる。管制システムと機上システムが協調して作成した、最適な「四次元軌道*2」に沿って航空機が飛行すれば、空の渋滞は抜本的に解決される。しかし、実現には、精度の高い軌道計画をリアルタイムに更新する必要がある。軌道計算に用いる変動要素は気象など多岐にわたる。AI技術の発展により膨大な蓄積データから規則性を見いだすことができれば、実現の可能性は急速に高まるだろう。

 実際、2015年に整備された現在の管制システム*3は、全航空機の軌道の実績と予定、気象との関係性などのデータを日々蓄積している。収集したデータは、AIベースの次期管制システムを開発する重要な基盤となる。軌道ベース運用に向けた環境が、欧米に先んじて着々と構築されつつある。「航空後発国」と呼ばれて久しい日本が、全く新たな管制システムを手に、世界の空の混雑解消に貢献する未来に期待したい。

図 国内空港および日本上空の総フライト数


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