[地域創生]スタートアップに期待される地域の課題解決

Point
課題解決に対する地域発スタートアップへの期待が大きい。
自治体はスタートアップと課題に取り組み、初期の顧客となること。
スケールアップできる課題設定がカギ。

オープンイノベーションセンター 須﨑 彩斗

 国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されるなど、企業による社会課題解決の取り組みに関心が高まっている。日本では社会課題解決をもたらすものとして主に都市圏の大手企業のイノベーションが期待されてきた。今後は、地域密着の目線で課題を解決する地域発ベンチャー企業(スタートアップ)の存在感が増す。

 地域に根ざしてスタートアップが活躍できるのは、革新的な技術を用いてスピーディーに事業を開始(スモールスタート)できるからである。大きな市場を必要とする大企業では対応できず、手付かずのまま残っている地域課題は多い。就農人材不足に悩む小規模な農家に対し、センサーとAIを活用した農作物育成を、1年以上にわたり支援する取り組みなどはその好例といえよう。

 では実力のあるスタートアップをどう地域に呼び込むか。ポイントは二つある。まず、スタートアップと伴走して課題解決に取り組み、事業へのインセンティブを増すため初期の顧客となること。これについては地域固有の課題を示し、解決策を提案したスタートアップと一緒にその解決を目指す「スタートアップインレジデンス」という取り組みが始まっている。

 もう一点は、事業のスケールアップを支援することである。単に展開の範囲を拡大するのではなく、事業のスコープを広げ、スタートアップが短期間で全国ないしグローバル規模に事業展開する可能性をアピールする必要がある。そのためには行政と異なる視点で社会課題を見据え、新事業を企画できる外部有識者を有効に活用するべきだ。

 三菱総合研究所が神戸市と共催した「未来共創カンファレンス*1では、同市がスタートアップの事業化を支援した事例が紹介された。その一つに、低所得者対象のチャット形式のキャリアカウンセリングサービスがある(図)。現在は事業スコープを広げ、電子母子手帳を核とした「母親の悩み共有」や「出産後のキャリア相談」の新事業を計画中だ。神戸市は、「チーフ・イノベーション・オフィサー」として、米国のスタートアップ支援事業者を招いた。事業拡大支援にますます注力することが期待される。

図 スタートアップを地域に呼び込む課題設定の流れ


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