[イノベーション]社会課題解決型ビジネスの広がり

Point
先進国での社会課題解決においてビジネスで対応できる領域が拡大。
鍵は課題の絞り込み、先端技術活用、共感の醸成、政策・制度の後押し。
三菱総合研究所もビジネス創出を通じてこのムーブメントをけん引する。

オープンイノベーションセンター 小野 由理

 ビジネスによって解決可能な社会課題領域が広がっている。途上国における飢餓や貧困、公害などの社会課題は、経済成長や先進国の先例活用、公共などによる所得再分配により解決の道筋がみえている。これから先進国が直面する社会課題は高齢者の自立支援、たんぱく質の安定供給、身近で使いやすい移動手段の確保などとなろう。その解決は、国家や公共の組織にすべて頼るのではなく、ビジネスによる対応が基本となる。

 社会課題をビジネスに結びつける最初の鍵は、社会問題の背後に隠された不満やニーズに着目し、目指すべき方向や解決策を絞り込むことだ。「よい課題」にフォーカスし、業界知見や市場環境の見通しも織り込んでマーケットを創出していく必要がある。 さらに不可欠なのは、先端技術と人々の共感だ。例えば配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズ(ウーバー)は公共交通機関によってではなく、自家用車のIoT化とシェアリングを通じた交通渋滞の解決策を提供した。安心・便利な移動手段確保と低稼働資産の有効活用を、独自技術を駆使して両立させたことが、多くの人々の共感を呼んだ。当初から意図していたかは定かではないが、自動運転や電気自動車の導入の流れにも乗り、排ガス抑制や交通事故対策にも貢献している。

 ウーバーのビジネスモデルは世界各地に広がった。国によってはタクシー業界や当局の猛反発を招いている。しかし、課題解決の糸口をつかみ、シェアリングという社会変化の源流を生み出した秀逸なイノベーションとして、歴史に刻まれるはずである。 政策・制度面の後押しも重要な要素となる。この点に関しては米国のメディケア(公的医療保険)がBMI(肥満度を示す体格指数)低下にインセンティブを与えている点に注目すべきだろう。肥満問題は21世紀型の社会課題の一つでありながら、民間の取り組みだけでは解決に向かいにくい実情があるからである。

 三菱総合研究所は、社会課題解決型ビジネス創出のエコシステムを目指す「未来共創イノベーションネットワーク」を運営している。会員と手を携えこのムーブメントを加速するとともに、こうしたビジネス創出の一翼を担いたい。

図 21世紀型の社会課題を解決するビジネスの創出過程


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