[コンテンツ]VRによる教育のゲームチェンジ

Point
没入感が強く、大型設備も不要なVRは技能訓練の敷居を下げるのに有効。
医療やスポーツなどの幅広い分野に適用が可能。
VR開発事業者を主役とする教育のゲームチェンジも起こり得る。

コンサルティング部門 社会ICTイノベーション本部 仙頭 洋一

 Virtual Reality(VR)はコンピューターが合成した映像や音響などを使い、実体験が不可能あるいは困難な空間を再現する技術である。没入感が強く鮮明な記憶が残りやすい。従来は必要だった大がかりな設備をそろえなくてもよく、コストも抑制できるため、高度な専門技能訓練の敷居をぐっと下げる効果がある。

 医学界では、360度カメラで撮影した手術の様子を投影して、実際にその手術をしているような感覚で器具の使い方を学べるコンテンツが考案されている。体内をめぐるツアーに参加するかたちで臓器の構造をリアルに学べるケースもある。

 スポーツ界でも、本番に近い環境をVRが再現するようになっている。NTTデータが開発し、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが導入したことで話題になったトレーニングシステムでは、疑似的な「打席」に何度でも立てる。実際の試合と同じ感覚で、苦手な投手の球筋や球威を体験できるため、本番での打率向上が図れる(表)。従来型の戦術や鍛錬に加えて、実践的なトレーニングを行うためのコンテンツをいかに入手・作成するかという情報戦の要素が、今後は勝ち負けへの重みを増すのかもしれない。

 センサーが読み取った視認・反応データをAIが分析すれば、訓練している各個人の心身の特性や体調の変化、習熟度に合わせて、メニューをきめ細かく切り替えることが可能になる。VRの強みである個別対応やフィードバックの機能は、専門技能の訓練期間の短縮や効率化に貢献するだけでなく、教育全般においても威力を発揮する。そこがVR開発事業者の腕の見せどころでもある。単なる繰り返しでは得られない学習効果が実証され、既存の枠組みにとらわれない「学びの道」が開かれる可能性がある。

 VR開発事業者が、各個人に最適化したコンテンツを組み合わせることでサービス提供側の主役となれば、教育のゲームチェンジが起こりかねない。最大公約数としての画一的な教材を提供してきた従来型の教育コンテンツ事業者はこうした正念場も想定して、今のうちから手を打っておくべきであろう。

図 専門技能訓練にVRを活用している事例


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