[ヘルスケア]「いつでもどこでも医療」の実現

Point
米国では当たり前になりつつある遠隔診療が日本でも普及する見込みだ。
「いつでもどこでも」主治医にかかることができ、患者の利便性が向上する。
制度動向を注視しつつ、もっと民間活力の導入を進めよう。

ヘルスケア・ウェルネス事業本部 古場 裕司

 ある朝、あなたが体調の悪さを感じたとしよう。そういえばここ数日調子が悪かった。風邪をこじらせただけかもしれないが、重篤な病気かもしれない。しかし、会社を休んでまで通院するのは面倒だ。そこで、会社が契約している「遠隔診断」サービスを自宅から利用することにした。スマホのテレビ電話で医師に病状を相談し、喉の奥の状態もスマホのカメラを通して診てもらうことができた。薬は通勤途中にある薬局で受け取り、大した遅刻もせずに出社できた──。

 このような話は決して遠い将来のことではない。実際にデジタルヘルスが進んでいる米国では、ある医療保険者の6割の診療がオンライン診療、メール・電話相談など遠隔的に行われているという。仕事や子育てで忙しく受診する時間がないという患者側の意向や、保険財政的な効果も確認されつつあることを背景に、近年急速に普及しているのだ。

 日本においても2018年4月、遠隔診療(オンライン診療)が、医療保険制度上初めて診療報酬体系の中に位置づけられた。これにより、対面診療を原則としながらも、オンライン診療を行った場合に「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」などを算定できるようになった。診療報酬への組み込みによって日本の遠隔診療も普及に向けて大きな一歩を踏み出したといえる。

 将来的には人工知能を用いた「AI診断支援」が、過去の疾病履歴や検査結果をもとに、主治医の診断をアシストすることも可能になるだろう(図)。近年、AIの発展は著しく、すでに画像診断では経験のある医師を上回る成績を示しているとの報告もある*1。さらに、主治医が専門外の疾病を診断・治療する場合には、「遠隔診療支援」を使ってネットワークでつながった専門医からのアドバイスを速やかに受けることが可能になり、診断の精度は大幅に向上する。

 こうした医療イノベーションを加速させるため、規制緩和を待つだけではなく、医療への熱い思いと技術をもつ起業家の育成・発掘、あるいはビジネスに対する投資環境の整備など、民間側の攻めの取り組みに期待したい。

図 イノベーションにより実現する将来の医療の姿


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