[経営戦略]ものづくりIoTは第2世代へ

Point
ものづくりにIoTを活用した事例には、効果が限定的なものも多い。
機械やセンサーで得られる情報だけでは問題の特定が難しい場合もある。
必要に応じて現場の作業記録も加えて、使える情報にすることが重要。

コンサルティング部門 経営イノベーション本部 田中 理史

 IoTを活用した「設備の稼働モニタリング」や「工程進捗状況の可視化」などは製造現場で当たり前の事象となってきた。しかし、すでに90%近い設備の稼働率をさらに底上げしたり、作業員の残業を数時間短縮したりするための手段にとどまることも多く、IoTの投資額が効果に見合わないケースも少なくない。

 国内製造業のA社では、稼働率の向上を目的としてIoTの活用に着手した。当初、設備の稼働データをもとに、稼働停止が発生した要因を特定しようとしたが、詳細要因が記録されていないため、具体的な改善施策を出せずにいた。この背景には、暗黙のうちに、現場作業員に極力負荷をかけないよう、機械やセンサーで取得できる情報だけを前提に考えていたことがあるという。

 その後、担当役員・現場責任者・担当者が客観的な視点で「情報を収集して実現すべきこと」を協議し、想定外の稼働停止の場合には、その要因について、設備起因のものか、人起因のものかに至るまで詳細に記録させることが必要との判断に至った。併せて、現場担当者における記録作業の負荷軽減のために、タブレットで入力する仕組みを実装することとした。その結果、収集された情報により改善施策を具体化できるようになり、この活動を1年間継続したところ、20%の生産性向上を果たした。これは、入力に要する現場の負荷増とタブレットの導入コストを考慮しても見合う成果である。同社は現在、全工場への横展開に取り組んでいる。

 IoTという言葉が先行し、機械やセンサーで情報を収集することがIoTであると捉えられがちであるが、そこから得られる情報だけで取り組めることは限られている。受動的に「取れる情報」を活用するのがIoTの第1世代なら、能動的に「取るべき情報」を扱うのは一歩進んだ第2世代である。IoTに取り組みながら想定した効果が得られていない場合には、自社が第1世代にとどまっていないか、あるいは「取るべき情報」を扱っているかについて客観的に精査し、今後の取り組みを見極めることが重要である。

図 製造業A社におけるIoT導入例


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