[医療]「くすりの値段」の決め方

Point
続々と登場する超高額の医薬品は国民の生活に大きな影響を与える。
臨床的有用性や経済性などから医療技術を評価する必要がある。
リアルワールドデータの活用や長期的追跡を可能とする仕組みづくりを。

ヘルスケア・ウェルネス事業本部 梁瀬 鐵太郎

 昨今、超高額な医薬品が続々と登場して話題となっている。あまりに高額なために、公定価格である薬価が引き下げられるケースも見受けられる。しかし、巨額の開発費を投入している医薬品企業の立場からすると、薬価引き下げは新薬の開発力ひいては、製薬会社の競争力の低下につながる。一方、利用者の立場からすれば、薬の値段に見合った効果が得られない場合は無駄な出費となる。今後も医薬品開発コストの上昇は避けられず、強いジレンマに陥ると予想される。

 このような事態に対応するために英国では、国立医療技術評価機構(NICE)*1が、臨床的な有用性や経済性などさまざまな視点から医療技術を評価する試みを続けている。日本でも「経済財政運営と改革の基本方針2018」において、新規医薬品や医療技術の保険点数などを決める際に、費用対効果や財政への影響といった経済性評価を検討する旨の記載がある。今後はこうした動きが加速するだろう。

 国民にとって医療技術評価は有用であるが、新規の医薬品や医療技術が世に出るたびに評価用のデータベースを作っていたのでは手間がかかりすぎる。臨床現場から日々得られる患者単位のデータである「リアルワールドデータ(RWD)」を収集するプラットフォームを構築し、継続的・長期的に医療技術の評価ができる仕組みを構築する必要がある(図)。RWDとしては、診療報酬明細書(レセプト)や検査結果などを登録している電子カルテの利活用が期待される。しかし、現在は医療機関ごとに電子カルテが作成され、個人のデータを一元的かつ長期的に蓄積できない。病院での診療だけではなく、母子手帳や学校・企業での健診など、生涯にわたる情報を統合・分析できる仕組みの構築が重要となる。

 医療費や介護費を削減するには、予防医療の観点からデータを蓄積する必要がある。続々と発売される新規医薬品を国民が納得して使うことができるように、個人ごとのRWDを蓄積して活用するインフラ構築は欠かせない。

図 「くすりの値段」を適正にするシステム


MRIマンスリーレビューの目次へ