[原子力]稼働中原発の安全確認制度が大きく変わる

Point
稼働中の原発に対する原子力規制庁による設備検査は新制度で廃止。
事業者が不具合と対策に責任を持ち、規制庁は事業者の監視に集中。
新制度導入を機に「安全を自ら高める」意識への転換が事業者には必要。

原子力安全事業本部 杉山 直紀

 原子力発電所の再稼働や廃炉決定は大きな話題となるものの、いったん稼働すると、あまり注目されない。そのような中、国際原子力機関(IAEA)による規制評価での勧告に基づき、稼働中の原発の安全を確認する制度が2020年に向けて大きく変わろうとしている。

 新制度では、原子力規制庁による設備への直接的な検査は廃止される。この結果、事業者が全ての安全確認を行うことが求められ、規制庁はその実施状況を監視する役割を担う。従来は設備を主体としてきた安全確認の対象範囲も、現場の従事者の活動状況などを含めた、より包括的なものとなる。

 不具合への対処法も変わる。これまで規制庁は、不具合発生時に事業者が保安規定*1に沿った対処ができていないなどの場合に対応することになっていた。新制度では、規制庁は不具合が安全に及ぼす影響を評価するようになる。大きな影響がある場合にかぎり、重大さに応じて「白」「黄」「赤」に区分けし、規制を強化する。しかし、影響が小さい場合は、事業者の責任で対応することになる(表)。

 米国では、2000年から同様の制度が適用されている。規制当局が指導などに乗り出すような不具合の報告は一つの原発あたり、年間でせいぜい1件である。その裏で、事業者は実に年間で約3万件もの問題点を自ら洗い出している。この中には、従事者による駐車場利用が不適切であるなど、気の緩みをうかがわせる細かいものも含まれる。事業者はこうした問題点の中から、安全に関わる不具合に対しては、ほぼ全ての是正や再発防止に努めている。この徹底ぶりの裏には、事業者自らが原発の安全を維持・向上させようとする矜持(きょうじ)がある。

 日本の新制度では、事業者が自らの責任・意思で「安全を確認」して「不具合があったら改善」するよう求められている。一方、国内の事業者は今なお、規制当局の意向を気に掛ける面がある。新制度導入を機に、事業者としては、「自らの意思で稼働させた原発の安全は自ら確保し高める」という意識への転換を図る必要があるのではないだろうか。

図 新制度における原発不具合への対処法


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