[エネルギー]電力先物市場への期待

Point
電力自由化で価格競争は進んだが、トータルなサービス競争は道半ば。
電力先物市場が「小売りの経営安定化」「サービス多様化」を促す。
社会全体のメリットのためにも各プレーヤーは積極参加・活用を。

環境・エネルギー事業本部 土石川 章子

 電力小売りの全面自由化から3年が経過したが、自由化本来の目的である健全な競争状態の形成・維持は実現途上にある。電力小売りの顧客獲得競争が、値下げ合戦に陥っていることが一因である。価格競争そのものは悪いことではないが、体力(資金余剰力)勝負の消耗戦により、安定調達できる電源のない新電力が事業の撤退や継承*1に追い込まれた例も見られる。電力・ガス取引監視等委員会は十分な競争圧力の存在が認められないとの判断から、2020年3月末の規制料金撤廃を見送った。現状を打開する鍵を握るのは、早ければこの9月に上場となる見通し*2の、電力先物市場の本格活用で あろう。

 主な効用は二つある。まず、大規模な電源をもたない小売電気事業者の経営安定化が期待できる。電力調達価格のヘッジ*3および長期的な調達計画策定が容易になることによる。スポット市場の価格変動や最適化しきれていない相対契約が一部事業者の安定的な経営を妨げてきたが、リスク回避の選択肢が増える可能性が高まる。次いで、新たなヘッジ手段の活用によって、多彩なサービスメニューの開発が期待できる。「ハイリスク・ハイリターン型の調達価格連動型」「需要家にとって将来の支払額を見通しづらい燃料調整費がゼロ」(図)などのユニークかつ戦略的なメニューで競うことで、値下げ一辺倒の消耗戦が回避できる可能性がある。

 メニュー多様化のメリットは小売事業者のみにとどまらない。例えば、太陽光発電の拡大による昼間の電力卸価格低下を活かし、先物取引により昼間の調達価格を低く固定できれば、安価な深夜料金を利用してきた電炉メーカーなどは昼間に操業できる可能性がある。従業員にとってはワークライフバランスの向上、雇用主にとっては深夜手当削減や人材獲得につながる。また、発電事業者にとっては太陽光発電の出力抑制の回避、火力発電所の再経済運用・稼働確保につながるメリットも期待できる。

 このように電力先物市場は社会全体にメリットをもたらす。そのためには、流動性の確保が不可欠であり、プレーヤーには十分な制度理解と積極的な参加が求められる。

図 電力先物を活用した多様な料金メニュー例


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