[イノベーション]「減価するデジタルマネー」の経済効果

Point
キャッシュレス決済による生産性向上と消費促進に期待が高まる。
時間とともに価値が減少(減価)するデジタルマネーの社会実験を実施。
導入効果として30%程度の消費拡大が見込まれている。

コンサルティング部門 イノベーション・サービス開発本部 奥村 拓史

 LINE PayやPayPayなどキャッシュレス決済が花盛りである。主役は「モバイルペイメント」と呼ばれる、スマートフォンとQRコードを使った新しい決済手段だ。政府の後押しも強力な追い風となっている*1

 キャッシュレス決済は社会にどのようなメリットをもたらすのか。当社では、①現金取り扱いコストの削減や無人化・省力化による生産性の向上、②消費促進による経済活性化の二つの経済効果に着目した。いずれも効果は大きそうだが、実際のところ、効果は判然としていない。

 そこで当社は2019年2月、キャッシュレス決済に関わる社会実験を3地域同時に実施*2。時間とともに価値が減少するデジタルマネー*3(以下、「減価するマネー」)を用いて、特に②に関する経済効果についての検証を行った*4。比較するのは顧客あたりの利用額だ。その結果、減価するマネーは消費を促進し経済を活性化することが明らかになった。当社では、これらの効果を総合した場合に、30%程度の消費拡大効果が見込まれると試算した。同時にいくつかの興味深い特徴があることもわかった(図)。

 1点目は、消費促進は減価率の大きさではなく、減価「する」「しない」で決まる。2点目は、減価に対する男女の行動特性の違いだ。女性は顕著な回避性向が認められ、対象者のほぼ全員が減価前に来店した。一方、男性は減価に無頓着な傾向があるが、来店した場合の利用額が大きい。最後は、年代によって回避時の消費性向に差があることだ。30代と60代は消費を大きく増やす傾向が認められた。

 本結果は、利用者から加盟店へ一方向しか使えないマネー*5による減価効果にすぎない。経済の大きさは、お金の所有者が変わる頻度(どれだけ流通するか)によって決まる。法制度などの環境が整い、個人間送金*6によって減価するマネーが現金のように転々流通すれば、減価効果と相まってより大きな経済効果が期待できる。

 支払いの電子化だけでは経済は大きくならない。今後、転々流通が可能になれば「消費主導型社会」の実現が大きく近づく。

図 実証実験から得られた減価するデジタルマネーに関する気づき


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