[まちづくり]地方都市の人口と活力を保つヒント

Point
子育て世代にとって短い通勤時間は重要な要件。
これは福岡市の人口が一貫して増え続けている背景でもある。
大都市の活力を保つ鍵は表面からは見えにくい。

未来構想センター 佐野 紳也

 日本は2011年に人口減少社会に突入したが、東京圏への一極集中は加速している。こうした中で地方都市が人口を保つには、子育て世代を呼び込む方策が必要である。

 家庭生活の充実度合いは、通勤時間にも左右される。その条件を満たしている大都市の典型が福岡市だ。前述のmif調査で、子供のいる30代就業者の往復通勤時間(1日平均)をみると、福岡市内で勤務している場合は0.8時間である。東京23区の1.4時間、大阪市の1.3時間、名古屋市の1.0時間に比べ、かなり短い。子育てに必要な広さをもつ住宅を、職場から遠くない地域で確保しやすいと推測できる。

 福岡市の人口は1970年代から一貫して増加し、2013年に150万人を突破した後も増え続けている*2。市当局はサービス業を中心とする企業誘致に努めるとともに起業支援に積極的*3で開業率も高い。雇用確保に加えて、通勤時間の短さが示すように職住接近につながるコンパクトな都市づくりが進んできた。

 医療や学費の面でも、子育て世代にとっての恩恵が大きい。病気になった子供の保育を代行する「病児・病後児保育事業」の施設数が多く、事業の延べ利用件数は2017年度に政令指定都市でトップとなった*4。私立の中学・高校の年間授業料が、人口100万人超の都市にしては割安との統計もある。

 天神や中洲といった魅力的な繁華街、とんこつラーメンやもつ鍋に代表される博多料理、都市部の近郊に広がる豊かな自然など、転勤族や若者に人気の要素だけが、福岡市が長期にわたって人口増加を続けてきた要因ではないだろう。こうした表面的なイメージからは見えにくい子育てのしやすさは、地方都市が活力を保ち続ける上で、十分なヒントになりえる。

図 30代就業者の「生きがい」(全国調査)


MRIマンスリーレビューの目次へ