坂東 組織への浸透となると、先ほどのパイプラインの構築が基本となります。その上で、経営層は目標を明確にしてコミットすることが最優先。管理職には、多様性を面白がり、スポンサーになることに挑戦して欲しい。メンターは相手によって適不適がありますが、スポンサーにはなれます。また、そうしたチャレンジをした管理職に対し、きちんと評価していただきたい。若い方たちはスポンサーと一緒になって、上司や仲間の長所をよく見て、リスペクトする。「ありがとう」「よくやったね」と口にしながら「補い助け合うことでチームとして価値を創出する」ことを期待しています。
出口 ビジネスパーソンは弱さを見せてはいけないと思いがちですが、実は誰もが弱さを抱えています。仕事以外でも、重い病気、家族の介護、育児など個々の事情がある。こうしたものを抱えて生きづらさを感じている人が、それを認め、助けてと言えるようになると、サポートしてもらえ、受け止められたという実感を得ることができます。そうした安心感を得ながら自分らしく仕事をすることで心の健康も保てるようになります。心理的安全性が大きな組織ほどイノベーション創出力が高いと注目されており、まさにその点を重視すべきでしょう。また、D&Iを進めても、離職者が出るなど思うようにいかないこともあると思いますが、諦めずに、何が問題だったのかを検証するなどPDCAサイクルを回していって欲しいです。
増本 組織文化にするという点では、一部の部門だけでD&Iを推進していこうとしてもなかなか難しい。以前、D&Iの推進を一部の部門を起点に始めた企業がありましたが、結局、他部門とのコミュニケーションがとりづらいなどの問題から、途中で頓挫しました。やはり経営トップから一般社員まで、方針を決めて一斉に動かないと進みませんし、成果も出ないと思います。
山添 当社でも一部にはまだD&Iがもたらす価値に確信を持っていない方がいるのは事実です。その点で、先ほど話題になった「面白がる」「スポンサー」といった切り口でディスカッションを深めていかなければならないと思いました。また、ここ数年、多様なバックグラウンドをもつキャリア採用の方が増えていますが、そうした社員をしっかりと受け入れることは、ダイバーシティの効用に気づく重要な機会です。その点で、より積極的にキャリア人材とコミュニケーションをもつよう努力していく必要があると思います。