着実に進行する人口減少・少子高齢化を背景に、国・地方の財政は厳しい状況が続く。他方、高度経済成長期に整備した公共施設が更新時期を迎えており、国・地方自治体は、対応するための予算の確保に日々苦心している。このような状況を見越し、約20年前の1999年に「民間の資金・経営能力・技術的能力の活用により、効率的・効果的に社会資本を整備し、国民に低廉・良好なサービスを提供」することを目的としたPPP・PFI制度が導入された。これに伴いさまざまな分野の公共施設などの整備・運用に民間企業のリソースやノウハウが活用されるようになり、2016年度までに累計で609事業、契約額で5.4兆円に到達している。
従来の公共施設では、誰もが「利用できる」ように、「低料金」「バリアフリー化」「アクセスしやすい場所への立地」など、利用者の公平性に配慮した整備・運営を優先してきた。これに対し、PPP・PFIを導入した公共施設では、従来の公共施設において不足していた、利用者の利便性・快適性を重視した整備・運営が行われている。具体的には、公共施設に本来期待される機能に、「利用者のさまざまな要望に応えるためのサービスの充実」「利用者が楽しく過ごせるためのエンターテインメント性向上」などの付加価値を加え、利用者の満足度を高める工夫を凝らした施設が増えている。ここでは、代表的な事例を二つ紹介する。
従来の公共施設では、誰もが「利用できる」ように、「低料金」「バリアフリー化」「アクセスしやすい場所への立地」など、利用者の公平性に配慮した整備・運営を優先してきた。これに対し、PPP・PFIを導入した公共施設では、従来の公共施設において不足していた、利用者の利便性・快適性を重視した整備・運営が行われている。具体的には、公共施設に本来期待される機能に、「利用者のさまざまな要望に応えるためのサービスの充実」「利用者が楽しく過ごせるためのエンターテインメント性向上」などの付加価値を加え、利用者の満足度を高める工夫を凝らした施設が増えている。ここでは、代表的な事例を二つ紹介する。
【事例1】天王寺公園エントランスエリア「てんしば」(大阪市)
大阪市は、市が所有する天王寺公園のエントランスエリアにある公園「てんしば」を対象に、都市公園法に基づき公園施設の設置、管理を行う事業者として民間企業の近鉄不動産(株)を選定し、2015年に民間企業による整備・維持管理・運営が開始されている。同社は、公園中央に芝生広場を整備するとともに、その周囲に配置した商業用区画の賃貸収入によって公園に掛かる一切の費用を賄っている。これにより、大阪市の費用負担を削減できたことに加え、来園者の多くが利用するカフェやレストランのほか、「ペット連れの来園者が気軽に立ち寄れるペットショップ」「子供連れの来園者向けの幼児玩具メーカーが運営する遊び場」など、多様な要望に応える店舗を立地させることができた。この結果、同園の年間来園者(2015年10月~2016年9月)は425万人に達している。
【事例2】農林公園ろまんちっく村(宇都宮市)
宇都宮市は、農林業への理解を深め、食文化や健康づくりに親しむ施設として農林公園を1996年に開園し、2008年よりこの施設の指定管理者として民間企業の(株)ファーマーズフォレストを選定した。同社は、県産食材を使ったさまざまな料理を提供するレストランなどの運営を始めるとともに、「ファーミングエンターテインメント」と銘打ち、遊びながら農業を体験できるアクティビティの提供を開始した。従来の施設でも行っていた飲食サービスや農林業体験に「ここでしか味わえない地元の新鮮な食材」「楽しみながらできる体験農業」などの要素を加え、利用者の満足度を高めることに成功した。この結果、来園者は年々増加し、2017年には年間145万人(併設の道の駅含む)を超えた。