リモートワークによる在宅時間が延びれば、家庭におけるエネルギー消費量は増加する。半面でオフィスでのエネルギー消費量は減るかたちになるため、リモートワークが社会全体のエネルギー消費量を増大させるとは限らない。
ただし、政府は温室効果ガス排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに達成する目標を掲げている。家庭のエネルギー消費増を抑制する対策を講じなければ、この目標達成が難しくなるおそれがある。
だが、法的に見て、省エネルギー政策の根幹をなす「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」では、家庭部門が直接の規制対象外となっている。省エネ法には、企業が販売する家電などに高いエネルギー効率を求めるトップランナー制度※1が規定されるなどしているものの、家庭に対して企業向けと同様の直接的な規制をかけることは容易ではない。そのため、コロナ後の家庭のエネルギー消費を抑制するには、新たな後押しが必要となる。
政府におけるカーボンニュートラル達成に向けた議論でも、これまでのところ、供給側の対策に関する論点が中心である。需要側の行動変容をうまく促し、その効果を織り込んだ道筋を示すことが不可欠である。