マンスリーレビュー

2017年3月号トピックス1スマートシティ・モビリティヘルスケア

多様なストック施設の活用による魅力的なCCRCの実現を

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2017.3.1

地域創生事業本部長谷川 専

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 超高齢社会においてシニアが楽しく元気に活躍できるCCRCの普及は重要。
  • そのためには共有空間の充実が不可欠で、公共施設などの積極的な活用が鍵を握る。
  • 公共施設などの活用促進にはノウハウ共有の仕組みや関連制度の整備が必要。
高齢化が進む日本では、シニアが元気でいることは、本人だけでなく、社会、経済にとっても重要である。こうした背景のもと、シニアが安心して暮らし、生涯にわたり楽しく元気に活躍できる生活空間としてCCRC(Continuing Care Retirement Community)の整備が推進されている。従来の高齢者住宅が健康に不安を感じてから入居するのに対して、元気なうちから入居するのがCCRCの特徴だ。そこでは、入居者同士が日々の活動などを通じてコミュニティを形成し、万が一のときにはお互いが支え合う互助力を発揮して困難を乗り越える。

そのためには入居者が集まる場所として食堂や多目的室などの共用空間の充実が不可欠だが、いざ充実を図ろうとすると、住まいとして貸し出せる面積の割合(レンタブル比)が低下し、採算性が悪化するという問題が起こる。これがCCRCを推進しようとする事業者にとって大きな障壁となっている。

この問題を解決する方策の一つとして、公共施設などの既存ストックを積極的に活用する事例が出てきている。例えば、「ゆいま~る多摩平の森」(日野市)や「ゆいま~る高島平」(板橋区)は、UR(都市再生機構)団地を改築したCCRCである。「スマートコミュニティ稲毛」(千葉市稲毛区)では、撤退後の商業施設を購入し、これを改築してCCRCのコミュニティ機能を担うクラブハウスとして活用している。

これらの事例では、既存の住宅施設や商業施設の活用により採算性が改善するだけでなく、共用空間の充実や段階的整備の容易化といった効用も生まれている。さらに共用空間を利用する地域住民との交流も進むことから、地域の活性化に寄与することも期待される。

このような取り組みを参考にしつつ、さらなる促進を図るためには、活用事例やノウハウを共有・蓄積する仕組みを整えることが重要だ。その上でストック活用を阻む法制度や税制のボトルネック(補助施設の用途廃止に伴う補助金返還の可能性など)を除去・緩和するとともに、インセンティブ措置を講ずるなどの改善が望まれる。
[図]ストックを活用した「ゆいま〜る多摩平の森」

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