マンスリーレビュー

2017年9月号トピックス3デジタルトランスフォーメーション

“BIM×AI”がもたらす建設業界の変革

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2017.9.1

ものづくり革新事業センター平本 充

デジタルトランスフォーメーション

POINT

  • 建設現場では、生産性と品質の向上とともに人手不足の解消が求められる。
  • 「BIM」が問題解決の鍵を握り、AI連携によりさらなる高度化が進む。
  • BIM活用により、業務の標準化や蓄積されたデータの活用が期待される。
建設の現場では「生産効率UP」と「品質向上」の両立が求められている。工期短縮やミスと手戻りの低減(無駄の排除)といった課題の解決を担うソリューションとして期待されているのが、近年、急速に普及しつつあるBIM※1である。工期短縮や手戻り低減は「人手不足対応」にも直結するため、非常に大きな期待が寄せられている。

BIMは、コンピュータ上に作成した建物の3次元モデルに、建設資材の形状や属性に関する情報(性能情報)を紐づけるソフトウエア(図)。従来は紙図面から手計算で行っていたコスト・工期の計算や仕様変更による影響分析が、視覚的に理解しやすい3次元モデルで説明できるだけではなく、建物に使う部材の寸法、品番、コスト、工期などの付随情報を合わせて管理できるので、工期短縮と品質管理の高度化が実現できる。日本の建設分野においても、「試しに使ってみる」段階から、「どう使いこなすと機能を最大限に活用できるか」という次元に、ユーザー側の意識も格段に向上している。昨今の性能の改善やクラウド技術の向上により、PCの処理時間も短縮され使い勝手も上がったことから、BIM活用の機運は今後も高まっていくものと考えられる。

今後は、BIMの活用を業務の一つの基盤として位置づけ、各部材の属性データに関するルールを整備する必要がある。その結果、業務の標準化も進み、さらなる業務効率化や人材育成も期待できる。データは統合データベースとして業務分析の対象にもなる。建設現場の業務改革に向けては、こうした好循環がまさに求められている。

さらに、BIMにAIが実装されれば、熟練者の経験則や暗黙知に基づいて判断されていた場面でAIが判断の選択肢を提示してくれるようになる。例えば施工計画を検討するための最初のたたき台を作成する時間を大幅に短縮できる。

「BIM×AI」活用は、大規模物件のみならず中規模物件でも進む。大手ゼネコンと作業を請け負うサブコン、専門工事事業者、あるいはその他関係する事業者との情報共有がますます求められる。人手不足、技能伝承の課題は業界共通であり、競争力を維持するために今後も新技術のキャッチアップは欠かせないだろう。

※1:Building Information Modeling

[図]BIMの概要