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2020年2月号トピックス1経営コンサルティング

正しいダイナミックプライシングのために行うべきこと

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2020.2.1

経営イノベーション本部久保田 広

経営コンサルティング

POINT

  • 価格を動的に見直すDPの利用が拡大。今後は浸透の度合いが高まる。
  • 導入失敗で企業収益を損ない顧客満足度の低下を招く危険性も。
  • 「顧客満足度」と「企業収益」のバランスのチェックに注力を。
ダイナミックプライシング(DP)とは商品やサービスの価格を、需要と供給のバランスに応じて動的に変動させる価格戦略のことである。ホテルの宿泊費や航空券では、当たり前になりつつあるが、最近ではスポーツ、エンターテインメントなど従来DPと無縁だった分野にも急速に広まりつつある。

背景の一つには、ネット販売の普及に伴い、多様な消費者ニーズに即した価格変更を行いやすくなったことがある。しかし、先行企業の中には、過度な値下げで収益を必要以上に失ったり、逆に値上げにより、顧客満足度を下げたりする例もある。これからDPに取り組む企業にとっても、すでにDPに取り組んでいる企業にとっても、PDCAサイクルを回していく中で、「顧客満足度」と「企業収益」のバランスを取りつつ、両者を向上させることが重要である(図)。

とりわけ、C(チェック)の段階で、顧客満足度と企業収益双方の向上につながっているかを分析し、その後の改善につなげていくことがDPの成功に通じるポイントである。一般的に顧客が満足したかどうかの実態は見えにくい。それを補うため、市場調査を行い、多様な角度から実態を計ることも通例になっている。さらに、企業収益を売上高などの数字だけから見ても不十分である。プライシングの結果に加え、社会情勢や競合他社の動き、プロモーションの状況など複合的な要素を加味した分析が必要である。

いずれの場合も、ある程度高度な分析スキルを支えるITツールの活用が不可欠である。例えば、DPで成功している企業の中には、統計学を駆使した行動分析スキルをもとに販売履歴データに蓄積された価格変更と売上変化を数値的に解析して、プライシングの良しあしを判定しているケースも多い。あるいはビッグデータ分析ツールを用いて、会員組織から得られる大量かつ詳細なデータをもとに消費者の意向を分析して顧客満足度をチェックする例もある。現時点でそこまでのスキルがない企業でも正しいDPに近づけるべく、顧客満足度と企業収益の二つの視点を忘れずにPDCAサイクルを確立させ、自社に必要となるスキルの向上に励むべきだろう。
[図]正しいダイナミックプライシング(DP)のためのPDCAサイクル