ニュースリリース

三菱総合研究所、日本の洋上風力ポテンシャル海域に関する分析結果を発表

洋上風力と漁業の協調に基づく開発海域の具体化、未来共創に向けて
2024.4.25

株式会社三菱総合研究所

POINT

株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:籔田健二、以下 MRI)は、4月25日、研究レポート「日本の洋上風力ポテンシャル海域 ─洋上風力と漁業の未来共創につながる好循環の形成に向けて─」(以下 本レポート)を発表しました。本レポートは、洋上風力と漁業の対話促進に向けた基礎情報として洋上風力のポテンシャル海域の分析を行い、洋上風力と漁業の協調の実現に貢献していくことを目的としています。

1. 背景

洋上風力は、温室効果ガスの2050年ネットゼロ実現、エネルギー・経済安全保障の確保、産業育成と経済成長の実現に向けた重要な電力供給源です。日本の洋上風力市場を拡大し、産業を発展させるためには、市場規模や開発計画を具体化し、予見性の高い市場を構築することが極めて重要です。
その鍵となるのは、洋上風力と漁業の協調を前提とした開発海域の特定です。そして、両産業の対話を促進するためには、その基礎となる、ポテンシャル海域に関する情報共有が不可欠です。

本レポートでは、自然環境条件、海域利用状況および事業性の観点を考慮した、日本における洋上風力のポテンシャル海域の初期的分析を行いました。本レポートを入口として、関係各所における議論を深めながら、洋上風力と漁業の協調を実現することが期待されます。

2. 分析結果の概要

本レポートの概要は、以下の通りです。

分析の概要

  • 自然環境データ(風速・水深等)に加え、船舶航行や漁業への影響を考慮するため、海域利用データ(船舶航行状況・漁業権等)も活用し、日本における洋上風力のポテンシャル海域※1を分析
  • 事業性の観点を加えるため、各海域の発電コスト※2を試算

※1:本レポートにおける分析は、全ての自然条件や社会条件、漁業等の海洋利用の実態、系統連系可否等を考慮できていないことから、実際の開発可能海域とは一致しない場合がある。また、あくまでポテンシャルを示すものであり、2050年ネットゼロ実現に向けた必要導入量を示すものではない。

※2:将来的なファームサイズの拡大、技術革新、国内サプライチェーン形成、港湾・系統インフラ整備、事業期間の拡大が実現された場合のコスト。限られた自然条件データや、一定の前提条件に基づき機械的に分析したものであり、実際の自然条件、今後の洋上風力市場や産業の習熟化、技術進展、系統整備費用等により、本分析結果と実際の発電コストに乖離が発生する可能性がある。

主な分析結果

  • 全ポテンシャル海域の面積は、着床式※3 70GW、浮体式※4 2,396GW相当と推計
  • 国の導入目標(2040年30~45GW(浮体式含む))※5や 2050年カーボンニュートラル実現に求められる洋上風力の導入量100GW(JWPA試算)※6は本推計値の数%に該当。船舶航行や漁業への影響を最小限に抑えながら各目標を達成できる可能性が示された
  • 事業性が高いと想定される発電コスト10円/kWh未満のポテンシャル海域の面積は、2050年時点で着床式70GW、浮体式1,477GW相当と推計

※3:海底に基礎を固定し、基礎の上に風車を設置する技術形式

※4:浮体構造物を係留索・アンカーで海底に固定し、浮体構造物の上に風車を設置する技術形式

※5:洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会, 洋上風力産業ビジョン(第1次), p.4, 2020年12月

※6:一般社団法人 日本風力発電協会, JWPA Wind Vision 2023, p.11, 2023年5月

浮体式ポテンシャル海域の分析例
三菱総合研究所作成(使用データおよび出所はレポートp.9, p.24参照)

3. 今後に向けて

今後、洋上風力と漁業の両産業が保有する知見・データを集約し、さらに精緻に自然条件や社会条件、漁業等の海洋利用状況を考慮することができれば、ポテンシャル海域のさらなる具体化が可能です。MRIは、本レポートの分析結果の精査を進めるとともに、洋上風力と漁業の未来共創につながる好循環の形成に向けた活動に取り組みます。

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