地方創生を加速するICT:第3回:ICT利活用による市民の行政参加の促進

タグから探す

2016.3.28

社会ICT事業本部佐藤正典

デジタルトランスフォーメーション
法制度が複雑化し、住民ニーズも多様化する中、行政職員数は減少傾向であり、効率的な行政運営が求められている。こうした状況のもと、これまで行われてきた情報システムの導入による効率化に加えて、住民票の写しや印鑑登録証明書などの証明書自動交付機の設置やコンビニ交付、電子申請、総合窓口による申請受付や発行の一元化の取り組みなどにより、住民の利便性向上を図る自治体も増加している。さらには、センサー技術などの活用により、横浜市における道路冠水監視といった生活インフラの監視や北海道岩見沢市などの児童・高齢者見守りなど、ICTを活用した新たな社会課題への対応も始まっている。

それでも、行政がすべての社会課題に対応するには限界がある。そうした中、公共施設の不具合などに関する情報を市民がスマートフォンなどから提供して行政と共有する仕組み(例:千葉市)や、ICT機器を利用した見守りサービスを民間事業者と連携して提供する取り組み(例:和歌山県すさみ町)、ボランティアの案内役が操作を手伝うことでICT機器の操作に慣れていない高齢者でも容易にネットスーパーを利用できる仕組み(例:奈良県葛城市)など、ICTを活用した住民・民間と行政の協働によって、社会課題に対応する動きが生まれていることは注目される。

このようにICTの利活用が、市民や民間と行政との接点を増やし、市民が主役となった社会課題の解決へ向けた動きを促進させる。市民の行政参加により地域活性力を維持しているアメリカ・ポートランドでは、1割の市民が「ネイバーフッド・アソシエーション(近隣住民組織)」などの市民活動を行っており、さらにその1割がその活動を先導する役割で活躍している。日本でも、ソーシャルメディアなどのICTと先導役の設置などのコミュニティ活性化の仕組みを組み合わせることで、多くの市民の積極的な行政参加が期待できる。自治体としても、多くの業務分野で市民や民間との協働を実践し、市民にとって魅力的な街づくりを進めることが重要だ。
図

連載一覧

関連するナレッジ・コラム