ウェルビーイングに関してはさまざまな先行研究があります。ウェルビーイング向上に寄与する心理的な要因は、個人の自己実現に関する「I」、他者や社会とのつながりに関する「We/Society」、世界平和など普遍的な価値観に関する「Universe」の3つに分類できるとする考え方があります。
科学技術振興機構社会技術研究開発センターの「日本的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」 プロジェクト※1では、国内の約1,300人の大学生に、自分のウェルビーイングを決める要因についてアンケートを実施しました。回答結果の属する要因を、「I」「We/Society」「Universe」に分類したところ、「We」に属する要因を挙げる回答者が6割を超えました※2。他者や社会とのつながりを重視する人はとても多いのです。
しかしながら、他者や社会とのつながりがなく、孤立を強いられている人々の増加は、大きな社会課題となっています。
世界と比較しても、日本における孤立の問題は深刻といえる状況です。社会的孤立に関する調査では、「普段友人や同僚、またはその他の社会的グループとの関わりがほとんどない人の割合」で、日本は世界(OECD20カ国)平均の6.7%を大きく上回る15.3%という結果になっています※3。英国や日本では担当大臣を置くなどさまざまな政策的対応も取られていますが、コロナ禍によって人と人との接触が制限される状況では、社会的孤立は深刻化する可能性があります。
今後深刻さが増すと考えられる社会的孤立という課題を解決に向かわせる可能性は、「CX技術(コミュニケーションテクノロジー)」と呼ぶイノベーションにあると当社では考えます。CX技術は、時間や空間を超えて人とのつながり方やコミュニケーションを実現する技術です。例えば、ひきこもりの状態にある人に、他者とのつながりを与えるきっかけをもたらします。当社の試算によれば2020年で約100万人のひきこもりと1.1兆円の経済的損失が発生していると推計されました。これに対し、CX技術の活用によって人間関係に起因する要因が解消されると仮定した場合、約60万人が社会復帰可能で、0.7兆円の経済的損失の回復が見込まれます。将来的にCX技術が社会一般に普及し、人間関係に起因するひきこもりが発生しない社会になれば、約2.3兆円の経済効果があると推計されました※4。