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震災・復興を語り継ぐことの大切さ 2025年大阪・関西万博での震災復興アピールへの期待

第5回調査結果の報告(2022年実施)

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2022.12.2

セーフティ&インダストリー本部義澤宣明

伊藤優美

瀬川優美子

白井浩介

東日本大震災から11年目となる2022年6月に、福島県の復興状況や放射線の健康影響に対する意識や関心・理解などに関するアンケート調査を実施した。2017年から続く継続的なアンケート調査であり、今回で第5回目を迎えた。2025年に開催予定の大阪・関西万博において、東日本大震災からの復興を成し遂げつつある姿を世界に発信することも重要視されていることから、第5回調査では大阪府民も調査対象に追加した。

2017年、2019年、2020年、2021年の調査結果と今回調査(東京都民)の比較結果、5年間の継続調査結果(東京都民)のまとめを示すとともに、2025年に開催予定の大阪・関西万博の認知度や期待度についての調査も行った。さらに、東京と大阪での意識の違いなどを調査した。加えて、震災復興や放射線の健康影響についての今後の情報発信の進め方、および大阪・関西万博での震災復興アピールへの期待とそれに関する提言をまとめた。

調査の概要

第5回意識調査(2022年調査)
  • 調査期間:2022年6月2日~5日
  • 調査地域(回答数):東京都(1,000サンプル)、大阪府(1,000サンプル)
  • 調査対象:20歳~69歳の男女
  • 調査方法:インターネットアンケート
参考 2017年、2019年、2020年、2021年に実施。調査対象、調査方法は第5回調査(東京都民)と同じ条件である。

調査結果に基づく提言

(1) 復興状況や放射線の健康影響について情報発信

  • 5年間にわたる継続調査の結果から、東京都民における震災への意識・関心は薄れつつあることが浮き彫りになった。震災から得た重要な教訓を語り継いでいくという観点では、15年、20年という節目のタイミングでの情報発信やイベントなどを通じて、人々の意識・関心を再び喚起する機会を効果的に設けていくことも重要になる。
  • 健康影響に関する理解は、5年間で大きく進んだとはいえず、差別や偏見を生まない対応を継続することが、これまで以上に重要になる。
  • 大阪でも東京と同様に放射線の健康影響に関する理解が十分には進んでいないことが明らかになった。大阪・関西万博でも、この点に関係した積極的な情報発信が望まれる。

(2) 大阪・関西万博での震災復興アピールへの期待

  • 大阪・関西万博では、東日本大震災からの復興アピールが重要視されていることをさらに認知させる努力が望まれる。
  • 東日本大震災からの復興を成し遂げつつある姿を世界に発信することへの期待度は年代で差があるため、1970年の万博後に生まれた若い世代の期待度を高めることが強く望まれる。
  • 「阪神淡路大震災」から30年目となる2025年に開催される大阪・関西万博では、震災・復興についての積極的な情報発信の取り組みが強く期待される。

詳細レポート

調査結果の詳細は別添の「詳細レポート」に記載されている

一例として、「次世代以降の人への健康影響」が福島県の方々にどのくらい起こると思うか」を尋ねた結果を以下に示す。

5年間の継続調査の結果から、健康影響に対する理解が浸透し、状況が徐々に改善しつつあることが確認できた。しかし、次世代への影響の可能性が高いと回答した割合が依然として3割を上回っているため、差別や偏見を生まないような対応が引き続き重要である。また、2022年調査において東京都民と大阪府民の間の意識に、大きな傾向の違いはなかった。

加えて、大阪・関西万博では、東日本大震災からの復興を成し遂げつつある姿を世界に発信することへの期待度を尋ねて年齢別に分析した結果、東京、大阪いずれも、50歳代以上の年代は期待が大きく、30歳代以下と大きな差があった。
図 放射線による福島県民(次世代)への健康影響に関する東京都民の意識
放射線による福島県民(次世代)への健康影響に関する東京都民の意識
図 大阪・関西万博で東日本大震災からの復興アピールへの期待度
大阪・関西万博で東日本大震災からの復興アピールへの期待度
図 放射線による福島県民(次世代)への健康影響に関する東京都民と大阪府民の意識の比較
放射線による福島県民(次世代)への健康影響に関する 東京都民と大阪府民の意識の比較
詳細レポートには、図1~図16までの16種類のアンケート結果が紹介されている。

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