この問題について、放射線の健康影響に関するさまざまな科学データを検討している国際機関、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)は、以下のように報告している
※6。
「放射線被ばくによる確定的影響は公衆では観察されておらず、今後も出現しないと予測されている。(中略)また、「事故によって被ばくした人の子孫における遺伝性疾患の識別可能な増加」が生じることは予測されていない。放射線被ばくに関連する白血病または乳がんや他のタイプの固形がんの発生率が、識別可能なレベルで放射線に関連して上昇することはないと予測されている。福島第一原発事故による甲状腺線量の推定値はチェルノブイリ周辺が受けた線量よりも大幅に低いため、チェルノブイリ原発事故後に発生したような放射線被ばくによる甲状腺がんの大きな過剰発生についても考慮しなくともよいとみなされた」
現在の世代だけでなく次世代にも健康影響があると過半数の人々が考えている現状は、福島県民に対する誤った先入観や偏見を生み出す可能性も否定できない。
原発事故から6年が経過した現在、福島から離れた東京で、放射線に関する知識に触れる機会が減ることは無理もないといえる。ただ、理解や情報が不正確なまま2020年を迎えると、東京2020大会で訪日する外国人にも、そうした情報が伝わるおそれがある。
本調査は、三菱総合研究所における独自調査であり、社内研究「2020年オリパラで求められる福島復興・放射線リスコミ研究」において実施した。
※1:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「東京2020アクション&レガシープラン2017」
https://tokyo2020.jp/jp/games/legacy/items/legacy-report2017.pdf(閲覧日:2017年11月10日)
※2:飲料水:10ベクレル/kg、牛乳:50ベクレル/kg、乳児用食品:50ベクレル/kg、一般食品:100ベクレル/kg。
※3:福島県「10の指標にみる福島県のいま」
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11045b/10sihyo.html(閲覧日:2017年11月10日)
※4:質問項目は、消費者庁「風評被害に関する消費者意識の実態調査(第8回)2016年10月」を一部利用。
http://www.caa.go.jp/earthquake/understanding_food_and_radiation/pdf/161005kouhyou_1.pdf
※5:質問項目は、福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター「平成27年度県民健康調査「こころの健康度・生活習慣に関する調査」結果報告書 2017年10月」を利用。
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/240069.pdf
※6:UNSCEAR「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響に関するUNSCEAR2013年報告書刊行後の進展」
http://www.unscear.org/docs/publications/2016/UNSCEAR_WP_2016_JAPANESE.pdf(閲覧日:2017年11月10日)