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経済的不安から「倹約化」する日本の若者たち

「破滅的消費」米国との比較から考える日本の処方箋

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2024.6.17

政策・経済センター田中嵩大

海外戦略
コロナ危機以降、日米の若年層で消費動向に変化が見られるが、その様相は極めて対照的だ。米国では、経済的な不安感の広がりや将来の不確実性の拡大を背景に、「今」を楽しむために浪費を重ねる「破滅的消費(Doom Spending)」が社会問題化している。一方で日本では、将来への備えのために節約傾向を強めており、消費回復の妨げとなっている。そこで本コラムでは、米国と比較した日本の若年層消費の特徴を分析し、過度な「倹約化」を防ぐための提言を行う。

日本・米国で若年層の消費性向に差

日米の消費動向は明暗が分かれている。GDP統計における実質消費を見ると、2024年1-3月時点で米国は、物価高や金融引き締めといった逆境の中でも予想に反して堅調さを維持している。これに対し、日本は4四半期連続で前期比マイナスとなった。

集計方法や対象といった統計の差には留意が必要だが、政府統計をもとに日米の年代別消費性向(=収入のうち消費に回す割合)を示したものが図表1である。コロナ危機以降、中年層(45-54歳)では消費性向が大きく低下するなど日米でおおむね似た動きを示しており、高齢層(65歳以上)もコロナ危機前の2019年水準近くまで回復している点は共通している。これに比べて、差が大きいのが若年層(34歳以下)だ。米国では2022年時点で消費性向が2019年水準まで戻っている。2023年のデータは未公表だが、マクロの消費性向は2019年水準を上回っていることから、若年層でも一段と回復している可能性が高い。一方で、日本の若年層では、2020年で下げ止まっている他年代と異なり、2022年まで消費性向の低下が続いた。物価高による支出増もあり2023年には持ち直したものの、コロナ危機前の2019年水準を下回った状態が続いている。
図表1 日米の年代別消費性向
日米の年代別消費性向
注:日本は2人以上の勤労世帯における世帯主の年代、米国は消費者単位(≒世帯)における基準人物(Reference person)の年代で分類。消費性向の計算式は、日本が「消費支出÷可処分所得」、米国が「消費支出÷税引き後所得」。公表系列にない年齢階層は、世帯数分布(抽出率調整)で加重平均して推計。
出所:総務省「家計調査」、米国労働省“Consumer Expenditure Surveys”を基に三菱総合研究所作成
無論、若年層の相違だけで、日米の消費動向に明暗が分かれた理由のすべてを説明できるわけではないが、今後経済を担う若年層の消費意欲に差が出ていることは注目に値する。今回はコロナ後の若年層を取り巻く経済状況を分析し、日米の若年層の消費意欲に差が出ている理由を考察する。結論を先取りすると、コロナ危機後に高まった若年層の経済的不安が、米国では消費(浪費)を増やす方向に働いているのに対し、日本では消費を減らす方向に作用している可能性があるのだ。

米国:「破滅的消費」に走る若年層

米国では若年層の「破滅的消費(Doom Spending)」と呼ばれる行動が社会問題となっている。明確な定義はないが、例えばBloombergでは「若い世代が、自分たちの経済状況が絶望的だと考えて浪費すること」と表現されている。コロナ危機後に起きた、住宅や生活用品の価格上昇や労働市場の変化などによって、自身の経済状況を悲観し、場合によっては住宅購入や結婚を諦めてまで、衣服や宝石などの贅沢品に浪費することで、不安を紛らわそうとする行動だと言う。

実際、米国の若年層の経済的不安は高まっている。金融会社Credit Karmaの調査(2023年実施)によると、Z世代※1やミレニアル世代では自身の経済状況を不安視する割合が約7割と最も高い。また、デロイトの調査(同)でも、約半数以上のZ世代・ミレニアル世代は、将来的に結婚や住宅を購入することが難しくなっていると回答している※2。こうしたストレスを緩和するために行われるのが破滅的消費であり、同世代の約4割でこうした傾向が見られると言う。同様に、米国のZ世代の間では、どうなるか分からない将来のために貯蓄するよりも、現在の経験(旅行や娯楽など)にお金を投じることを重視する“Soft Saving“という価値観も広がっており、“Doom Spending”ほど刹那的ではないものの、同じ系譜と言えよう※3

こうした傾向は家計意欲に関する調査にも表れている。ニューヨーク連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)の調査によると、「収入減への対応」として、39歳以下の層で「消費を減らす」と回答した割合は、2023年12月調査で過去最低水準にまで減少、代わりに「借り入れを増やす」割合が増加しており、借り入れをしてでも消費を続けようという姿勢が伺える(図表2)。
図表2 収入減への対応(米国)
収入減への対応(米国)
注:2014年12月以降、毎年3回調査を実施。
出所:ニューヨーク連邦準備銀行の調査データを基に三菱総合研究所作成
「浪費化」に拍車をかけているのが、新たな決済手段であるBNPL(Buy Now Pay Later)やSNSの存在だ。BNPLは後払い型の決済サービスで、クレジットカードと比較して与信審査が簡易であることから※4、若年層でも利用ハードルが低い。実際BNPLの利用割合は若い世代で高く、衣服などの消費に使用している模様だ。また、SNSで同世代のインフルエンサーらがきらびやかな生活をしていることに喚起され、浪費に向かう若年層が増加しているとも指摘されている※5

こうした破滅的消費は、これまで米国経済を下支えする要因となってきた可能性があるが、先行きを考えると望ましくないことは自明だ。短期的には、借入返済負担が消費の重石になる。前述のCredit Karmaの集計では、2023年10-12月期のクレジットカードローン残高増加率(前年同期比)は若い世代ほど高い。ニューヨーク連銀の調査では、金利が上昇する中で「90日以上の深刻な延滞」に移行した割合はコロナ前水準を上回るなど、すでに消費減速の兆候も見られる(図表3、4)。BNPLはカードローンよりも延滞率が高いという調査もあるため、実態はさらに悪い可能性がある。加えて、破滅的消費が住宅購入や結婚といった将来を犠牲にしてなされるものであれば、中長期的な消費や潜在成長率にも悪影響を与えかねない※6
図表3 世代別の負債残高(米国)
世代別の負債残高(米国)
注:約8,500万人のCredit Karmaユーザーのデータをもとに集計。
出所:Credit Karmaを基に三菱総合研究所作成
図表4 クレジットカードローン延滞率(米国)
クレジットカードローン延滞率(米国)
注:90日以上の深刻な延滞に陥った割合。直近は2024年1-3月期調査。
出所:ニューヨーク連邦準備銀行の調査データを基に三菱総合研究所作成

日本:現在よりも将来を優先する若年層

生活費や住宅価格の高騰、不確実性の高い将来の雇用や収入といった、若年層を取り巻く経済的不安は日本も米国と共通している。内閣府「社会意識に関する世論調査」によると、「経済的なゆとりと見通しが持てない」と回答した20-30代は、2022・23年共に大きく増加、長引く物価高が特に若年層の経済的不安となっている模様だ(図表5)。

一方で、米国で見られるような若年層の浪費は、日本ではマクロの現象としては見られていない。前述の米国の調査とは設問設計が異なる点には注意が必要だが、内閣府「国民生活に関する世論調査」によると、「将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか」という質問に対し、「現在より将来に備える」と回答した割合は、若者を含めてコロナ危機後に大きく増加している。こうした状況は2008年秋以降の世界金融危機の後にも見られ、日本では大きな経済危機に直面して不安感が高まるたびに「倹約化」が進んできた(図表6)。コロナ危機以降、将来よりも現在の消費を優先する傾向が強まっている米国とは対照的だ。
図表5 経済的ゆとり・見通しが持てない割合
経済的ゆとり・見通しが持てない割合
注:「現在の社会において満足していない点は何か」という設問に対し、「経済的なゆとりと見通しが持てない」と回答した割合。10歳ごとの結果を、回答者数で加重平均して算出。2020年は調査未実施。
出所:内閣府「社会意識に関する世論調査(令和5年11月調査)」を基に三菱総合研究所作成
図表6 現在より将来への備えを優先する割合
現在より将来への備えを優先する割合
注:「将来に備えるか,毎日の生活を充実させて楽しむか」という設問に対し、2019年以前は「将来に備える」「どちらともいえない」「毎日の生活を充実させて楽しむ」から、2021年以降は「将来に備える」「どちらかといえば将来に備える」「どちらかといえば楽しむ」「楽しむ」から選択する形に変更。2020年は調査未実施。
出所:内閣府「社会意識に関する世論調査(令和5年11月調査)」を基に三菱総合研究所作成
実際、若年層の消費性向は、過去10年間低下している。名目可処分所得は2000年差で10万円近く増加したにもかかわらず、貯蓄を優先して消費支出額は横ばいで推移してきた(図表7)。コロナ危機後もその傾向は変わらず、物価高の影響を受けて食料品や光熱費等への支出がかさむ中、その他の支出を節約したことで消費総額は増加せず、期待されたようなペントアップ需要※7の発現は見られなかった。先行きも、若年層の財布は固い。消費者庁「消費者意識基本調査」で、品目別に「今後お金をかけたいこと」と「お金を節約したいこと」に分けてみると、旅行や交際など一部品目を除いて節約超の状況だ(図表8)。
図表7 家計収支の変化(34歳以下)
家計収支の変化(34歳以下)
注:二人以上の勤労者世帯が対象。
出所:総務省「家計調査」を基に三菱総合研究所作成
図表8 20代の今後の消費意向(2022年調査)
20代の今後の消費意向(2022年調査)
注:黒丸は「今後お金をかけたいこと」と「お金を節約したいこと」の差分を示す。貯蓄については、「今後お金をかけたい」が「貯蓄を増やす」に該当する。
出所:消費者庁「消費者意識基本調査(令和4年11月調査)」を基に三菱総合研究所作成

若年層に過度な不安を与えない風土の醸成を

経済的不安に対する反応が日米で異なる理由は、消費に対する価値観の違い(米国では消費が美徳、日本では貯蓄が美徳)や、失われた30年の有無の違い、将来不安の強さ(少子高齢化が不可避な日本の方が、将来不安が強い可能性)など、さまざまな要因が考えられる。経済的不安から破滅的消費に向かう米国と比較すれば、倹約志向の日本の方が健全だとはいえ、このまま消費性向の低下が続けば、国内需要の縮小は避けられない。また、若い時の経験は、その後の人生の資本となり得るが、消費行動を過度に抑制すればそれも損なわれる恐れがある。

消費性向を下げ止めるためには、若年層の経済的不安を緩和させることが重要だ※8。特に、20代の金融資産保有目的を見ると、「老後の生活資金」の割合が過去10年で3倍近くに急増している(図表9)。背景には、少子高齢化に伴う社会保障制度への懸念や、平均寿命の延伸による老後資金の必要性の高まりがあると考えられる。社会保障制度改革や少子高齢化対策を進めるとともに、これらの取り組みが将来不安の解消に向けてどのような効果をもたらすのか周知させることが求められる※9

同時に、前向きな行動が生涯賃金の改善につながるような制度作りや、そうした取り組みを行いやすい雰囲気を、政府や社会が作り出していくことも必須だ。具体的な方策としては、企業には高スキルを習得した人材をより評価する賃金制度に変えていくことが求められる。日本は米国などと比較して高スキル人材の給与が低く抑えられており、労働者のスキルアップ意欲をそいでしまっている。政府も、労働市場の流動性向上策やスキルアップに対する支援拡大など、労働市場改革を進めるべきだ。
図表9 20代の金融資産保有目的
20代の金融資産保有目的
注:金融資産保有世帯。複数回答。「単身世帯」と「二人以上世帯」を、世帯数で加重平均して集計。
出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]令和5年調査結果」を基に三菱総合研究所作成
当社が2024年4月に家計を対象に実施したアンケート調査によると、中長期的に高い賃上げ率を予想する20代は、他年代と比較して消費を増加させる意欲が強い。賃上げ期待を高めることができれば、消費拡大につながることが示唆される(図表10)。一方で、同調査で「自身の賃金が増加するために重要なこと」を尋ねたところ、20代は「自主的なスキルアップ(資格取得など)」と回答する割合が高い半面、「何をしても賃金は上がらない」との回答も多い(図表11)。
図表10 賃金予想別の消費意向(三菱総合研究所調査)
賃金予想別の消費意向(三菱総合研究所調査)
注:集計対象は、勤労者3,197名。勤労者を賃金予想でグループ分けし、「来年度(25年度)の消費を前年と比べてどの程度増やすか」という設問に対する回答結果を平均し算出。
出所:三菱総合研究所「生活者市場予測システム(mif)」アンケート調査(2024年4月13・14日実施)を基に作成
図表11 自身の賃金増加に重要なこと(三菱総合研究所調査)
自身の賃金増加に重要なこと(三菱総合研究所調査)
注:集計対象は、勤労者3,686名。「自身の賃金増加に重要だと考えること」を上位3つまでの複数回答(選択肢は、①定期昇給、②正社員転換、③転職、④スキルアップ、⑤副業、⑥政府の支援、⑦労働組合の交渉力、⑧同一労働・同一賃金の徹底、⑨何をしても賃金は上がらない)
出所:三菱総合研究所「生活者市場予測システム(mif)」アンケート調査(2024年4月13・14日実施)を基に作成
加えて、日本財団が17-19歳を対象に実施した調査(2024年)でも、「知力やスキルを持つことは、成功につながる」「努力は、成功につながる」「誰しも、努力すれば生活水準を上げることができる」に同意する割合は、中国やインドなどの成長国と比較して日本は低水準であり、これから労働市場に参入する世代にも諦めが広がっている(図表12)。上述のような取り組みを通じて、努力が報われる風潮を醸成し、「若者を含めて誰しもが前向きな行動をとることで生涯賃金は改善する」という希望を持てる社会を作ることは急務だ。
図表12 本人の努力と成功についての関係
本人の努力と成功についての関係
注:各国の17-19歳男女を対象に、オンラインで調査を実施。「同意」と「どちらかといえば同意」の合計回答割合。
出所:日本財団「18歳意識調査 第62回 –国や社会に対する意識(6カ国調査)」(2024年4月3日)を基に三菱総合研究所作成
一方で、そもそも日本の若年層について言えば、経済状況はそこまで悪いものだろうか。前述の通り、若年層の可処分所得は過去10年で大きく増加した。たしかに物価高は賃金水準の低い若年層にとって悪影響が大きいが、人手不足から売り手市場にある新卒の初任給は上昇傾向にあり、足元で進んでいる賃上げの恩恵を大きく受けているのも若年層だ※10(図表13)。今や失業の心配はほとんどなく、新NISA制度による老後の資産形成支援や、副業・兼業といった新たな働き方の普及など、本人次第で収入を増やす余地は過去と比較して拡大していると言える。
図表13 年齢階級別の所定内給与
年齢階級別の所定内給与
注:全規模・全産業・全学歴。2023年は速報値。2003年の「65-69歳」は「65歳以上」。
出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を基に三菱総合研究所作成
こうした状況を踏まえると、若年層は実際の経済状況と比して過度な経済的不安を抱いているのではないか。日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」の景況感(前年比)とその理由を見ると(図表14)、景況感が比較的良い時は「自分や家族の収入」が理由になっているのに対し、悪い時は「マスコミ報道」が理由として挙げられる割合が高い。数十年ぶりの高い賃上げ率となっても、物価高や円安といった負の側面ばかりが強調されれば、経済的不安を増大させ、消費抑制要因となりかねない※11。経済に明るい兆しが見えようとしている今だからこそ、悪い面ばかりではなく明るい面も語っていくことで、若者の過度な不安感を取り除き、希望を持てるようにしていきたい。
図表14 景況感水準別の判断根拠
景況感水準別の判断根拠
注:全年代。景況感は「1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか」に対する回答。
出所:日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」を基に三菱総合研究所作成
日銀の高田創審議委員は、2023年9月に実施した講演の中で、賃金と物価の好循環に向けた環境変化の兆しとして、「物価上昇ショックが企業の価格・賃金行動に変化を与えること」、「DXや脱炭素などの社会転換に向けた投資意欲が高まっていること」と合わせて、「過去のトラウマ(≒失われた30年の記憶)にとらわれないZ世代の経済的な存在感の高まり」を挙げた。しかし、過去のトラウマにとらわれない若年層が、現在や将来の経済的不安にとらわれていれば、好循環の実現は遠ざかる。若年層の不安を緩和させ、彼ら彼女らが前向きに行動できる社会を作ることで、若年層が好循環を牽引することに期待したい。

※1:米調査会社Pew Research Centerによる、各世代(米国)の定義は下記の通り。ただし、厳密な定義があるわけではないため、調査などによっては指している層が若干異なる場合がある。また、統計によって若年層の分類が「34歳以下」や「40歳以下」などばらつきがあり、各世代と完全に合致した分析が難しい点には留意いただきたい。
・Z世代:1997-2012年生まれ(2024年現在12-27歳)
・ミレニアル世代:1981-1996年生まれ(同28-43歳)
・X世代:1965-1980年生まれ(同44-59歳)
・ベビーブーマー:1946-1965年生まれ(同60-78歳)
・サイレント世代:1928-1945年生まれ(同79-96歳)

※2:EYの調査では、Z世代の多くが現在の経済状況を「ほどほど」「悪い」と評価しており、約半数がコントロール不可能なほどの不安を抱えているとの結果が出ている。しかし、40歳になると親世代と同等の生活水準を実現できると考えている割合は意外と多く、将来に対してZ世代は慎重ながらも楽観的という意見もある。少子高齢化で国内経済の縮小が不可避との見方が強い日本よりも、将来に対する不安は米国の方が薄く、それが消費動向の違いにも表れている可能性がある。

※3:米国の若年層も浪費一辺倒というだけでなく、節約する層も存在する。2023年にはSNS上で“Loud Budget”という言葉が一部でバズワードとなった。これは「自分は不必要なものにはお金をかけない」と周りに宣言し、友人との食事や結婚式などの社会的な交流を減らすことで節約を行うというものである。このように、若年層(特にZ世代)は、価値観が多様なことも特徴の1つである。

※4:BNPLはメールアドレスや電話番号のみの登録ですぐに利用できる場合が多く、クレジットカード登録時のように勤務先や年収などの与信情報を必要としない。また、分割払いでも手数料がかからないという利点が利用者にとってはある。一方で、クレジットカードと比較すると、利用限度額が少ないこと、加盟店の手数料負担が重いといったデメリットがある。このことから、BNPLの利用者は若年層・低学歴層・低収入層の利用が多く、2021年にはBNPLの支払い失敗率はクレジットカードの4倍となったとの調査もある。

※5:若年層の浪費傾向は欧州でも指摘されている。McKinsey & Companyが欧州5カ国で実施した調査によると、「浪費するつもりだ」と回答したZ世代は59%と全世代(37%)と比較して最も高い。その傾向が顕著なのが、従来倹約志向が強いとされてきたドイツであり、同国がBNPLが最も普及している国の1つであることが関係している可能性がある。

※6:実際、World Economic Forumの調査では、若年層のマイホーム購入割合は、所得の減少と住宅価格の高騰から、上の世代と比較して非常に低く、実家にとどまる割合が増えていると指摘されている。

※7:景気後退期から景気回復期に移行した際に、消費者の需要が一気に回復する現象。コロナ危機の収束に伴い、日本でもペントアップ需要が発現することが期待されていた。

※8:本コラムでは詳述しないが、日本における若年層の消費性向の低下や「若者の〇〇離れ」の背景には、娯楽の多様化(SNSやサブスクリプションなどお金がかからない娯楽の登場など)や価値観の変化(コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスの重視など)も一因として考えられる。若年層の消費喚起のために、企業としては、彼らの価値観にあった商品・サービス開発も重要である。

※9:具体的な社会保障改革制度改革案については、当社ニュースリリースを参照
【提言】社会保障制度改革の中長期提言 「自律的な医療介護システム」への変革-来るべき「2040年問題」を乗り越えるために(2024.6.14)

※10:図表13で中年層の賃金水準が低下している背景には、非正規社員の割合が増加したことで、賃金水準が押し下げられたことが一因である。

※11:若年層の情報収集の手段としてSNSの活用が増加しているが、SNSにおける経済話題はWeb記事などを引用しているケースが多く、現在でもメディアは若年層にも大きな影響力を有していると言える。

参考文献

  • Credit Karma, “Forget doom scrolling, Americans now doom spend to cope with stress”, November 16, 2023
    https://www.creditkarma.com/about/commentary/forget-doom-scrolling-americans-now-doom-spend-to-cope-with-stress(閲覧日:2024年3月13日)
  • Bloomberg, “Gen Z Is Splurging on Luxury Goods to Soothe Their Economic Despair”, January 1, 2024
    https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-01-31/gen-z-millennials-are-doom-spending-to-cope-with-economic-uncertainty(閲覧日:2024年3月13日)
  • Deloitte, “2023 Gen Z and Millennial Survey”,
    https://www.deloitte.com/global/en/issues/work/content/genzmillennialsurvey.html(閲覧日:2024年3月13日)
  • BIS, “Buy now, pay later: a cross-country analysis”,04 December, 2023
    https://www.bis.org/publ/qtrpdf/r_qt2312e.htm(閲覧日:2024年3月13日)
  • McKinsey & Company, “An update on European consumer sentiment: Mixed feelings remain”, March 28, 2024
    https://www.mckinsey.com/industries/consumer-packaged-goods/our-insights/an-update-on-european-consumer-sentiment(閲覧日:2024年3月13日)
  • World Economic Forum, “This is why owning a home is more difficult than ever for young people”, Jan 31, 2022
    https://www.weforum.org/agenda/2022/01/younger-generations-homeownership-housing-market-wealth-inequality/(閲覧日:2024年3月13日)
  • 日本銀行「わが国の経済・物価情勢と金融政策 —山口県金融経済懇談会における挨拶要旨—」2023年9月6日
    https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230906b1.pdf(閲覧日:2024年3月13日)
  • Pew Research Center, “Defining generations: Where Millennials end and Generation Z begins", January 17, 2019
    https://www.pewresearch.org/short-reads/2019/01/17/where-millennials-end-and-generation-z-begins/(閲覧日:2024年3月13日)
  • EY," Financial worry is a top driver of anxiety among Gen Z, new EY study finds", September 18 2023
    https://www.ey.com/en_us/newsroom/2023/09/financial-worry-is-a-top-driver-of-anxiety-among-gen-z-new-ey-study-finds (閲覧日:2024年3月13日)