伊藤 ひとつの挑戦、そして経験がさらなる事業へと広がった事例ですね。
船曳 現地でヘルメットをかぶって作業着を着て行う減容化事業。関係者から「MRIはそんなこともやっているんですね⁉」とよく驚かれました。これまでそんなことをやっていませんでしたので、ごもっともな驚きです。この10年、そしてこれから、当社は調査・コンサルティングだけではなく、社会実装するシンクタンクになりたいと思っています。お話しした福島での現地事業はその先駆的な取り組みであったと捉えています。
伊藤 地域復興の道筋をつくることも防災の延長線上にありますよね。
船曳 除染などの環境再生とともに、福島第一原子力発電所(1F)が立地する福島県浜通り地域を中心とした地域コミュニティと産業の再生も大きな課題です。当社は、福島の環境再生と地域再生の両立を目指し、2016年に他社と協力して「福島イノベーション・コースト構想推進企業協議会」を立ち上げ、防災・レジリエンスや地域再生に向けた官民連携プロジェクトの企画・推進を5年間、行いました。震災後12年以上たちますが、福島の地域再生は今もなお、現在進行形の課題です。
池田 船曳さんはよく「防災をコストではなく、価値にしたい」とおっしゃっていて、非常に共感していますが、産業・地域の再生でも防災・レジリエンスが新たな価値として根付くとよいと感じています。
堤さんがこれまで経験されてきた災害の知見はどのように生かされているでしょうか。
堤 都市直下型地震であった阪神・淡路大震災の被害は一定程度の強震動対策や不燃化対策につながりましたが、老朽木造住宅や木造住宅密集地域の解消にはいまだ至っていません。一方、津波被害が甚大であった東日本大震災を受けて、「100~150年間隔で起こる災害に対してはハード対策、最大クラスの災害に対してはハード対策+ソフト対策で対応する」という対策を進めています。