山藤 DXとGXは、いずれも大きな変革(トランスフォーメーション)をもたらしますが、両者が雇用に与える影響は様相が異なります。先に申し上げた通り、DXの雇用影響の本質はルーティンタスクの機械代替であり、非定型で創造的なタスクのニーズ増加です。そこでは職業のタスク構成が変化し、人間ならではのタスクをこなすためのリスキリング(在職中を基本とするスキル更新)が必要となります。
一方、GXではルーティン/ノンルーティンを問わず、幅広い産業で脱炭素化に向けた職業の転換が起こります。電力産業では火力関連職種のニーズが減少する一方、再生可能エネルギー関連の雇用は大きく拡大する。自動車産業では、内燃機関に関する職種に代わって、電池やモーター関連の職種の需要が拡大する。DXでは既存スキルセットをベースとしたキャリアシフトが主体となりますが、GXではときに職種、業種、産業をまたぐようなキャリアシフトを余儀なくされるものと見込まれます。
山藤 定量的なエビデンスを用いて大局的な視点から将来モデルを提示し、それが雇用面と人材面でどういう影響を及ぼすかをスターティングポイントにする必要があるでしょう。それこそがMRIの強みでもありますし、その上でどんな人材をどこから動かせばいいかを提示できれば、必要となる政策・制度変更についての議論をかぶせられるようになります。