MRIマンスリーレビュー

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巻頭言|未来予測

理事長 小宮山 宏
「人と技術の未来」をテーマに2019年11月に開催した「三菱総研フォーラム」で、私は次のように発言した。

AIなどの技術は、医療や介護といった社会負担を健康や自立のためのビジネスに変えることで、人の自己実現を支援する社会の到来を期待させる。逆に、桁違いの能力を得たホモデウスにホモサピエンスが隷属するという事態も否定しえない。未来はこの両極のどこかにあり、それを決めるのは人の意志だ。ここまでがフォーラムでの発言内容だが、今回これに付言したい。

20世紀には予測が機能したが、これからは未来を決めるのは人だ。

しかし何も予測できないわけではない。例えば、リチウムイオン電池の価格がこの10年で約10分の1になることは予測できた。大量生産されるモノの価格は原料費の1.2倍から10倍の範囲に収まるという、簡便な経験則を私は知っている。銅線は銅と被覆材の価格を足して1.2倍すれば売価だ。化学プラントは2〜3倍、ハイブリッド自動車くらい複雑なモノでも10倍以下だ。

リチウムイオン電池の材料費は1kWhあたり1万円以下だ。複雑性がこの程度のデバイスなら価格は2万〜3万円以下になるはずだ。これが10年ほど前に私が考えた話の筋である。当時50万円などといわれ、電池が高いからEVは難しい、再生可能エネルギーシステムはダメだと言う人が多かった。

低炭素社会戦略センター(LCS)では山田興一氏のもとで、もっと丁寧に、デバイスの構造とその製造プロセスを、技術進化も考慮して設計しコストを算出している。だからLCSの予測は当たるのだ。

物質やエネルギーの原則に基づく未来は予測できる。都市鉱山は自然鉱山を、再生可能エネルギーは化石資源を駆逐するのだ。しかし、それも絶対とは言えない。ビルや自動車を海に沈めて漁礁をつくろう、地球温暖化はフェイクだ、そんなことになったらこうした予測すら当たらないかもしれない。

結局のところ、これからの未来を決めるのは人類の意志なのである。
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