マンスリーレビュー

2017年5月号

MRIマンスリーレビュー2017年5月号

巻頭言|無二の潜在力をもつ都市、東京

常務研究理事 村上 清明
森記念財団都市戦略研究所が発表した2016年版の「世界の都市総合力ランキング」によると、東京は3位だが、量的には世界トップといってもよいだろう。都市圏人口は3,800万人で世界1位。GDPは都市単独(約1兆ドル)でも都市圏(約1兆6,000億ドル)でも突出している。その繁栄の最大の原動力は巨大な人口集積である。それが、多種多様なビジネスを可能としている。

一方、イノベーションの創出という点ではどうだろうか。東京には、日本の上場企業の約半数、アメリカの上場企業(4,100社)の約40%に当たる約1,800社が立地する。また、大学は137校あり、その内5校は、THE(英国教育専門誌)が発表する大学ランキングで世界TOP500にランクされる。多数の国立の研究法人も東京およびその近傍に立地している。これらは公共交通によって1時間以内にアクセスできる。しかし、この潜在力を十分発揮しているとは言えない。

東京の潜在力を存分に発揮させるには、人財の多様化と知の結合を加速することが必要になる。過去の東京の繁栄は、主として日本中から集まった優秀な人財が担ったが、21世紀のグローバル経済下では、世界中から優秀な人財が集まる都市とならねばならない。東京はそれが可能な都市だ。安全で24時間安心して楽しめる生活。きれいな水と空気。効率的な公共交通。刺激的で退屈しない都市。多彩な食とエンターテインメント。これらをバランスよく備えている。知の結合には、ワーク・ライフ・バランスのとれた居住地が望ましいが、東京にはその候補地が多数ある。2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の選手村の跡地利用をはじめ、首都大学東京の国際大学化と合わせて多摩ニュータウンの一部を活用する手もある。

小池都知事は、アジアNO.1の国際金融都市構想を掲げているが、金融とイノベーションとの相乗効果を創出することで、東京の潜在力はより大きく開花するはずだ。そうなれば、2020年以降の東京、ひいては日本の未来の展望も拓けてくる。
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