マンスリーレビュー

2017年5月号トピックス4スマートシティ・モビリティ

民間主導のインフラ再生

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2017.5.1

次世代インフラ事業本部竹末 直樹

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • インフラ老朽化への対応を国主導ですべて実施するのは困難。
  • 膨大なインフラの維持管理には民間の知恵と技術の導入が不可決。
  • JIS化がインフラ管理事業の民間参入や市場拡大を後押し。
高度成長期に急ピッチで整備された橋やトンネルなどのインフラの老朽化対策が深刻な課題になっている。インフラを長期にわたって健全な状態に保つには、適切な点検と補修の継続が不可欠だが、わが国ではその財源確保が十分とはいえないからだ。特に地方自治体では、財源だけでなくベテラン技術者も不足しているため、点検すらままならないのが実情である。 少子高齢化に伴う税収減や社会保障費の増加も重なり、国がインフラの維持管理を主導するこれまでのやり方は、財政的にも技術的にも限界を迎えている。

一方で、膨大なわが国のインフラストックの老朽化を大きなビジネスチャンスと捉える民間企業も少なくない。インフラの点検・診断にセンサーやロボットを使ったり、IoTやAIを活用してデータの収集分析を行うなど、多彩な企業が参入して知恵やノウハウ、最先端の技術を競い合っている。国も「インフラメンテナンス国民会議」を各地で開催し、新技術の導入を後押ししている。 この流れを加速するには、国は法整備や有事の際のインフラ維持など必要最小限の関与にとどめ、民間は内外の知恵を結集してインフラ管理を主導することが望ましい。具体的には、国は異業種の参入促進、発注ロットの拡大、長期契約の導入など、市場の規制緩和と民間の裁量拡大に努め、民間企業は競争や提携を繰り返しながら、市場を拡大・活性化させていく。そのように国と民間が役割を分担できれば、動きにさらに拍車がかかるだろう。

今秋には、インフラを管理する組織が守るべき事項を定めた国際規格(アセットマネジメント:ISO55000シリーズ、2014年発行)が国内規格(JIS)化される。インフラマネジメントの基準が、新規企業にもわかりやすい規格として国内で普及すれば、民間主導のインフラマネジメント市場の形成につながる。 また、世界標準に準拠することで、海外の知恵や技術も取り入れやすくなる。JIS化がわが国のインフラの老朽化問題を解決し、さらにインフラの海外輸出にも貢献することを期待したい。
[図]民間主導によるインフラマネジメント市場の形成