マンスリーレビュー

2023年6月号

MRIマンスリーレビュー2023年6月号

脱炭素社会へのトランジション

常務研究理事 古屋 孝明
米中競争やグローバルサウスの台頭などにより、世界の多極化が進むことで各国の思惑が交錯し、カーボンニュートラルをめぐる国際情勢が複雑化している。

エネルギーは社会経済の血流である。その根源的な意味において、エネルギー安全保障と経済安全保障を両立させ、社会経済の安定や成長を損なわずに脱炭素化を実現することが必要だが、その道は容易ではない。

この難題には複合する社会課題が連関している。そこで問われる理想と、世界が直面する現実とのギャップをリアリティをもって埋めるべく、脱炭素社会への移行(トランジション)をマネジメントする総合知が求められている。

日本のトランジションの絵姿を描く際は、脱炭素化と資源循環の連動、資金移動とルールの適時見直し、国情に合わせた国際協調、人口減社会での高付加価値産業への転換といった観点が重要だ。これらの現実解を組み合わせたマネジメントを追求することで、新しい価値観への変化と行動の変容を大きく促進できる。

多極化する世界は、予測困難な歴史的な転換期にある。脱炭素化を含む持続可能な社会のウェルビーイングの実現は、日本が自律し世界で信頼される存在となるための命題であり機会でもある。日本全体を俯瞰する視点からセクターを超えた議論により、絵姿を常時見直していくことが大事だ。
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