マンスリーレビュー

2017年10月号

MRIマンスリーレビュー2017年10月号

巻頭言|日本が存在感を示す次の一手

代表取締役社長 森崎 孝
人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーンが紙面を飾らない日がないほど、世の中はデジタル革命一色に染まっている。加えて、進化のスピードは指数関数的といわれるほど速く、これまで夢と思われたことが想像を上回るピッチで実現されている。

しかし、モノ(アトム)の時代がデジタル(ビット)の時代に取って代わられるということではない。デジタル革命をリアルな世界で支えるのはモノである。モノが追いつかなければデジタルの進化も滞る。デジタルとモノは交互かつ補完的に進化していくのだ。

日本はデジタル革命でアメリカの後塵を拝したといわれるが、モノを構成するマテリアルは基礎研究で世界トップクラスの実力を維持している。事実、スマートフォンなどの電子部品の約4割を日系企業が占めるなど競争力をもち、マテリアルの輸出額は自動車に匹敵する。

ものづくりの世界では、コモディティ化が進んで価格競争が激化し、最終的に主役の座を新興国に明け渡す例が増えるなか、マテリアルはわが国の競争優位を保ち、高める源泉となり得る。マテリアルの製造ノウハウは一朝一夕では習得不能なため、今後も強みを発揮できる可能性は高い。

いま、各国はデジタル革命の勢いをマテリアルの領域にももち込み始めた。実験を積み重ねることなく、デジタル技術を駆使した新手法でマテリアル開発を企てている。日本の生命線は過去から蓄積した膨大な実験データであり、これにデジタル技術を追加して駆使すれば、アトムとビットが融合したイノベーションが期待される。

グローバル社会における日本の存在感が低下しつつある今だからこそ、お家芸ともいうべきマテリアルを起点に、新しいものづくりの姿を示したい。日本が世界の持続的成長の一翼を担うためにも、有効な一手となるであろう。当社は、11月にこのテーマでフォーラム開催を予定している。
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