新たな予防医療のポテンシャル—人生100年時代の豊かで持続可能な社会
常務研究理事 大石 善啓
2020年の日本人の平均寿命は、コロナ禍にもかかわらず男女とも過去最高を更新した。寿命が延びるのは喜ばしいが、高齢化により医療介護費は増加の一途で、社会保障費の圧縮は待ったなしの社会課題である。
最近まで「不摂生は自分の勝手」という風潮があったが、不健康な生活によって病気になれば、限られた医療資源を使い社会保障費を圧迫する。自助努力の限界や「健康格差」の問題もあるため、健康を一人ひとりの意識や行動に委ねるだけではなく、規制や税制の在り方を含め、社会全体として仕組みを考える必要がある。
例えば、民間医療保険が主である米国では、喫煙者の保険料が高く設定されている。英国では肥満対策として砂糖税が導入され、実際に清涼飲料に含まれる砂糖の量が減少した効果が報告されている。
当社の試算では、AIやIoTを使った予防医療を社会実装できれば、2030年の医療介護費は約1.5兆円削減される。疾病予防が介護予防につながり、働ける高齢者が72万人増加する。社会保障の持続性だけでなく、個人のQOL向上やアクティブシニアによる活力あふれた社会が実現される意義も大きい。
「健康は個人の問題」から脱却し、健康寿命の延伸と社会保障費の圧縮の両立に向けた社会の仕組みを構築すべき時が来ている。予防医療の社会実装により、豊かで持続可能な人生100年時代を謳歌(おうか)したい。
最近まで「不摂生は自分の勝手」という風潮があったが、不健康な生活によって病気になれば、限られた医療資源を使い社会保障費を圧迫する。自助努力の限界や「健康格差」の問題もあるため、健康を一人ひとりの意識や行動に委ねるだけではなく、規制や税制の在り方を含め、社会全体として仕組みを考える必要がある。
例えば、民間医療保険が主である米国では、喫煙者の保険料が高く設定されている。英国では肥満対策として砂糖税が導入され、実際に清涼飲料に含まれる砂糖の量が減少した効果が報告されている。
当社の試算では、AIやIoTを使った予防医療を社会実装できれば、2030年の医療介護費は約1.5兆円削減される。疾病予防が介護予防につながり、働ける高齢者が72万人増加する。社会保障の持続性だけでなく、個人のQOL向上やアクティブシニアによる活力あふれた社会が実現される意義も大きい。
「健康は個人の問題」から脱却し、健康寿命の延伸と社会保障費の圧縮の両立に向けた社会の仕組みを構築すべき時が来ている。予防医療の社会実装により、豊かで持続可能な人生100年時代を謳歌(おうか)したい。