マンスリーレビュー

2021年10月号トピックス2サステナビリティ経営コンサルティング

ESG投資が促す企業の非財務情報開示

2021.10.1

サステナビリティ本部齋田 温子

サステナビリティ

POINT

  • ESG投資の拡大で非財務情報開示の義務化や標準化が注目。
  • 開示促進の一方で、顔の見えない外形的な開示に陥るリスクもある。
  • 「外部環境の分析・評価」と「内部化」の両輪で企業価値向上を。

ESG投資が急速に拡大

従来の財務情報だけでなく、企業の環境(E)、社会(S)およびガバナンス(G)への対応も考慮したESG投資が近年急速に拡大している。世界における2020年のESG投資額は約3,900兆円で、過去2年間で15%伸び、資産運用残高全体の36%に達した※1

ESG投資拡大の流れは不可逆的といえる。

非財務情報開示の義務化や標準化が議論に

こうした中で、企業のESGへの取り組み状況を示す非財務情報開示の義務化や開示内容の標準化の動きが進んでいる。

EUではサステナビリティ開示基準の適用義務化を盛り込んだ非財務情報開示に関する改訂案が示されている※2

日本でもコーポレートガバナンス・コード改訂により気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った開示がプライム市場上場企業に対して求められたほか、サステナビリティ課題への取り組み強化の方針が示された。金融審議会において企業情報開示の在り方に関する検討も進んでいる。

さらに、開示内容の標準化については、国際会計基準審議会(IASB)の設置団体であるIFRS財団は、非財務情報に係る国際的な基準開発を目的に2021年11月のCOP26に向けて国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を予定している※3

今後は非財務情報開示の動きが加速することは必至である。

非財務情報開示の進展に潜む落とし穴

義務化や標準化が進展する一方で、懸念されるのが外形的な開示に陥ることである。

例えば、TCFDに沿った開示では、炭素税などの法規制や気温上昇が自社の気候関連のリスクであると記載するだけでは不十分である。製造業であれば、炭素税導入の影響が自社事業のバリューチェーンの上流、すなわち原材料調達価格の上昇につながり収益を圧迫するなど、影響経路と評価の結果について開示することが求められる。

企業の事業ポートフォリオは多様であり、バリューチェーンや人的資本の状況も異なる。貴重な社内リソースを投入したにもかかわらず、「顔の見えない開示」となってしまうことはあまりにもったいない。

「外部環境の分析・評価」「内部化」の充足を

非財務情報開示の本質は、自社にとって重要なESG分野の外部環境変化を絶えず分析、評価し、中長期的視野での企業価値の向上につなげることにある。
 
気候変動などの外部環境変化がもたらすリスクの低減と機会の創出に自社の事業でどのように取り組んでいるのかを非財務情報と関連付けて開示することが重要である。また、ダイバーシティなどの人材関連の非財務目標については自社の成長戦略に即して語られるべきである。非財務情報開示を経営戦略と結びつけて捉える「内部化」の充足が求められている。

※1:機関投資家の多くが、環境や社会に関する特定のテーマを設定した投資が長期的な投資パフォーマンスに好影響を及ぼすと考えているとの調査結果もある。

※2:Corporate Sustainability Reporting Directive(CSRD)案。 

※3:ISSB設立に関するIFRSの取り組み。

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