マンスリーレビュー

2023年11月号

MRIマンスリーレビュー2023年11月号

食と農 2050年のミライ

常務研究理事 古屋 孝明
健やかで安定した食と農は人間社会の根本だ。しかし現実的には、地政学リスクや気候変動に伴う食料供給不安と大量の食品ロス、農業による温暖化加速、水不足、感染症、生態系破壊が暗い影を落としている。少子高齢化が進む日本では、担い手不足も問題だ。

光の部分もある。デジタル、ロボット、バイオなどの技術革新により、生産性向上に加え環境や健康に関する新しい価値が生まれている。さらに日本では農業の新規参入が増えている。都市部と農村部で地産地消や自然共生のコミュニティが育まれ、自然や生命との対話が深まれば、人の意識や行動が変わる。「おいしい笑顔」の食文化を尊重しながら持続可能な社会を実現するような、次世代のビジネスが生まれるだろう。

こうした光と影の中で、日本政府は農業基本法を改正する。食と農には短期の利益だけでなく、国としての安定供給と、自然環境や地域社会の特性に応じた中長期の経営が求められる。

基本法の改正後は光と影の部分を定量化し、食と農の未来像を明確にした上で、新たな社会システムを構築せねばならない。それには、ステークホルダーや新規参入者の行動を促すことが重要だ。2050年に向け「食と農のミライ」を実現する方策の一端を紹介する。
もっと見る
閉じる

バックナンバー