マンスリーレビュー

2018年12月号

MRIマンスリーレビュー2018年12月号

2018年12月号 巻頭言「フェルメールの光と影」

研究理事 亀井 信一
フェルメール展に行ってきた。静謐と光の画家といわれ、日本で最も人気のある画家のひとりである。入館時刻が指定されていたにもかかわらず上野の森は多くの人で溢れ、入館までは20分待ちの盛況であった。

私が初めてフェルメールの作品を目にしたのは、ワシントンのナショナル・ギャラリーであった。もう20年も前の話である。それ以来、すっかりこの寡作の画家に魅了されてしまった。

フェルメールを語る場合、光の使い方に焦点が当たることが多い。多くの作品で表現されている真珠や瞳の輝きが好例である。しかし、今回東京に集められた作品を見て、光の当たる部分と深い影の部分とのコントラストに目が奪われた。

フェルメールが生きた当時のオランダは、独立から間もない中、意気軒高としていた。東インド会社を設立してアジアに進出し、ポルトガルとの争いに勝利して海の覇権を握った。まさに黄金時代の幕開けである。鋭い時代感覚をもった画家は、きらびやかな明るさの中にも静かに忍び寄る暗い影を感じ、それを作品の中で表現したかったのではないだろうか。

言うまでもなく、シンクタンクの役割の一つは未来予測である。世界中の未来予測を調べてみると、未来の捉え方に大きな違いがある。欧米の予測には、源流として破滅的なシナリオが多い。次の時代に警鐘を鳴らすことで破綻を回避する方策を示すことが予測の意義だと感じているからである。

一方、日本には、楽観的で輝ける未来像を示すものが多い。前向きな明るい未来で国民を鼓舞するほうがその実現に近づくと思うからだ。それぞれの国民性もあるだろうが、暗い部分から目を背けてはいけない。その漆黒の中にこそ真実が隠れていることを寡作の画家は教えてくれる。
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