マンスリーレビュー

2018年12月号トピックス5経済・社会・技術

時間ベースでは男性の6割にとどまる女性の就業率

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2018.12.1

政策・経済研究センター山藤 昌志

経済・社会・技術

POINT

  • 女性の就業率は高まったが、時間換算では依然として男性の6割の水準。
  • 多様な人材が活躍する社会を作る上で女性のフルタイム就業支援が必要。
  • 制度改正・技術革新・人材多様化を進め、社会全体で課題解決を。  
女性の就業率がここ数年大幅に上昇している。特に、子育て世代である25~44歳で伸びが顕著だ。同年代の就業率は2017年に初めて男性の水準の8割を超え、「女性のM字カーブ※1はほぼ解消した」とする報道もある。しかし、この数値は「働いているか否か」を基準にした人ベースの数値であり、「何時間働いたか」に基づく時間ベースで見ると、人ベースとはやや異なる様相が浮かび上がってくる。

余暇を除く年間の活動時間を2,400時間※2として、そこに占める平均的な年間就業時間の割合を「マンアワー基準就業率」と位置付ける。すると、2017年の女性のマンアワー基準就業率は男性の水準の6割弱(図)となり、就業時間の観点では男女差がまだまだ埋まっていない実態が明らかになる。この要因としては、保育施設の受け皿拡大や柔軟な働き方を許容する意識の醸成が不十分なことに加え、所得税の配偶者控除や社会保険料控除といった、専業主婦を手厚く保護している現行制度が、女性のフルタイム就業を妨げているところが大きい。多様な人材が活躍し、それを通じて日本のイノベーション力を高めるためにも、フルタイムで働きたい女性に対しては就業の機会を増やすことが必要だ。

しかし、そのための道のりは平たんではない。仮に女性のマンアワー基準就業率が男性の8割の水準まで上昇した場合、子育て世代の女性1人あたりで1日1.8時間、総量では2,700万時間相当の労働力が家庭や地域から失われる。これまで女性が担ってきた家事・育児・地域活動などの無償労働を補うべく、皆が知恵を絞らねばならない。

保育や小学校就学児童の受け皿整備など、公助が担うべき役割は大きい。しかし、より重要なのは自助・共助の意識、そして民間活力の利用だ。家事・育児に消極的な男性の意識改革(自助)、シニア層を含む地域住民による子育て支援(共助)は、女性の活躍には欠かせない。これに柔軟な働き方ができる勤務環境や家事代行サービスの提供、スマート家電の普及といった企業サイドの努力が相まって初めて、女性の就業環境は改善する。日本社会全体が当事者意識を持って取り組むべき課題だ。

※1:女性の労働力率を年代別にグラフにした際に表れるM字型の曲線のこと。

※2:年間活動時間は、「1日10時間×1カ月20営業日×1年12カ月=2,400時間」と想定した。

[図]日本の男女別・年齢