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2018年12月号トピックス4スマートシティ・モビリティ

更新工事の生産性革命

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2018.12.1

次世代インフラ事業本部竹末 直樹

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 国のi-Construction政策のもと、施工段階の生産性は着実に改善。
  • 施設の老朽化に伴い、維持・更新工事の需要が増加するのは確実。
  • 3次元データを元に設計・施工を行うことにより更新工事の生産性向上を。  
国土交通省は2015年以降、生産性革命の一環として「i-Construction」の導入を積極的に進めてきた。ICTの全面的な活用により、建設現場の生産性を2025年までに2割向上させるとしている。同省の資料によると、図面データを読み込んだ建設機械を使って、土工事※1を半自動化する「ICT土工」の施工時間は、2017年度で従来比約30%減少しており、目標の達成に向けて着実な一歩を踏み出したといえる。今後は土工から構造物へ対象を広げる必要がある。

また、老朽化に伴って既存構造物の維持・更新市場が急拡大すると予測される中、新設工事から、建て替えなどの更新工事に対するi-Construction導入が不可欠となる。既存施設の建て替えだけでなく、都市化が進んだ場所の地下に新たな構造物を造ることも、広義の更新工事といえる。この場合、既存の建物や埋設管などに影響を与えない工夫が求められるため、新設する場合に比べ手間と費用が大きくなる。東京の日本橋周辺で現在計画されている首都高速道路の地下化工事も、高架橋撤去にかかる約470億円を含めて、総事業費は約3,200億円に上る。工期も2020年の東京オリンピック・パラリンピック後に着工してから地下ルート完成までに10~20年を要する。

大都市での更新工事の例としては、英国のCrossrail建設が参考になる。ロンドン市内に約21㎞のトンネルと37の駅舎を新設・更新する工事を含む総額2.5兆円規模のメガプロジェクトで、既存の地下構造物(地下鉄、埋設管、建物基礎など)に影響を与えずトンネルを建設する必要があった。そのため、設計や施工計画の段階から3次元図面を使って、既存の構造物と新規の設備との位置関係を立体的に確認して物理的にかち合うのを防ぎ、工事のストップや手戻りを可能な限り削減している。

このように、更新工事の生産性向上には、施工開始前に諸問題を図面上で解決する「フロントローディング」が鍵となる。3次元管理を通じて、手戻りや設計変更などを極力防止できる(図)。更新工事の実施に合わせて3次元データを蓄積しておけば、将来の周辺開発の際にも活用でき、長期にわたっての生産性向上にも有効である。

※1:掘削や整地など、土を対象とした作業の総称。

[図]更新工事の生産性がUPする流れ