マンスリーレビュー

2018年10月号

MRIマンスリーレビュー2018年10月号

巻頭言|文理融合で社会課題解決を

代表取締役社長 森崎 孝
2015年に国連が国際社会の目標としてSDGs(持続可能な開発目標)を採択したことを受け、多くの企業が社会課題解決を起点とした事業活動に力を入れている。背景には、進歩が著しい科学技術の活用により事業(ビジネス)を通じた課題解決が可能になり、企業自身が課題解決を本業として捉え始めたことが挙げられる。

現実の社会においては、科学技術の進歩に加え、それらを活かすための環境が整備されたことにより課題解決に結びついた事例が多い。ディーゼルエンジンの排ガス処理技術開発と車の乗り入れ規制による都市部の環境改善、太陽光発電の技術開発と固定価格買取制度(FIT)を通じた再生可能エネルギー普及による地球温暖化対策などがある。これらは、技術開発(理)と環境整備(文)の連携により課題解決が実現し、事業(ビジネス)としても大きく育った好例といえる。

一方、技術的には開発が可能でも、社会的なコンセンサスが得られなければ、新たなステージに移行できない領域も存在する。一例として生命倫理、人工頭脳(AI)倫理などいわゆる技術倫理の領域が挙げられる。克服すべき課題が多様化・重層化かつグローバル化しているため、自然科学(理)と社会・人文科学(文)の連携にとどまらず、両者を融合した社会的コンセンサス、制度も含めた環境づくりが必要不可欠である。さもなければ技術の進展を望めないどころか、逆に新たな課題を引き起こしかねない。

社会課題解決に向けた企業の取り組みが本格化し始めた現在、かかる動きを一過性ではなく持続可能なものにするためには、文理双方の技術・知恵を結合し、相互に補完し合う文理融合型の不断の取り組みが求められる。教育の分野では教育改革の一環として文理融合の新たな試みが始まっているが、産官学によるオールジャパンでの文理融合型イノベーションから社会課題解決に向けた動きが加速されることを期待する。
もっと見る
閉じる

バックナンバー