マンスリーレビュー

2018年10月号トピックス1経済・社会・技術

AIによる身近な行政情報案内が本格化

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2018.10.1

コンサルティング部門 社会ICTイノベーション本部村上 文洋

経済・社会・技術

POINT

  • 住民に対する自治体の行政情報案内サービスにAIが寄与。
  • 対話形式で多岐にわたり相談に応じるスマホベースの実証実験が好評。
  • 2018年10月に商用化。LINEとの連携などを通じて浸透を目指す。
住民に対する地方自治体の情報案内サービスに、AIがひと役買っている。スマートフォンで住民と対話(チャット)する形式にすれば、いつでも効率的に問い合わせに応じられる。人口減や財政難に悩む地方自治体にとっても、職員の負担を極力増やさずサービスの維持・向上を図るうえで、強い味方になりそうだ。

当社が川崎市と掛川市の協力を得て2016年9月に実施した子育て支援に関する情報案内サービスの実証実験では、24時間いつでも気軽に利用できる点が評価された。2018年2~3月には35の自治体とともに、案内の対象をごみの出し方やペットの扱い、戸籍・住民票・印鑑登録などの多様な分野に拡大した。

実験にあたっては、クラウドの利用により自治体がサーバーなどを準備する作業を不要にした。多数の自治体による共同利用を想定して回答文も標準化することで、導入・運用コストを抑制した。実験に対する評価は良好であり、住民や行政職員の9割前後が継続を希望した(図)。

好評の背景には、若年層を中心として、チャットがコミュニケーションツールの主流になりつつある実情があるようだ。住民からは「いつでも問い合わせできるのは便利」「検索エンジンよりも適切な情報に誘導してくれる」「直感的で使いやすい」との声が寄せられた。行政職員からも「共同利用で安価に使えるサービスは中小規模の自治体にとってありがたい」「(住民だけでなく)行政職員が使っても便利」などと評価された。

この結果を踏まえ改善した「AIスタッフ総合案内サービス」は2018年10月に商用化。住民から寄せられると想定される質問のリストを2.5倍強に拡充したほか、回答の文例から「お役所言葉」を極力排除するなどして、対応をきめ細かくした。2019年4月にはチャットの威力をフルに発揮する目的で、若年層を中心に普及しているコミュニケーションアプリ「LINE」のメニューの1つとして利用可能にする予定である。こうした点をてこに、利用件数や収集データを増やし、回答の精度やスピードも高めていく。
[図]2018年2〜3月の実証実験を受けた継続利用意向