マンスリーレビュー

2018年10月号トピックス2テクノロジー

地域一体で創り出すドローン物流

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2018.10.1

科学・安全事業本部大木 孝

テクノロジー

POINT

  • ドローンを用いた荷物配送の事業進行化に向け取り組みが進行。
  • 取り組みの推進には、地域住民との合意形成が不可欠。
  • 協議会を設置して、住民参加型のサービス計画の実現を。
2018年以降、「ドローン物流」の実用化に向けた取り組みが急ピッチで進み始めた。政府は同3月に、ドローンの長距離飛行の実現に必要不可欠な「目視外飛行」(操縦者から目視できない範囲の飛行)に関する要件をとりまとめた。10月からは主に山間部の集落や離島において、3~10km程度の距離で、日用品や郵便物などを搬送する実証実験が立ち上がる見込みである。

これまでは、ドローンを目視外で飛行させる場合、飛行状況を確認する「補助者」を待機させる必要があった。今後の実証実験では、新ルールのもと、補助者を置かない目視外飛行も試行する予定である。従来の実証実験は、ドローンで荷物を運ぶための技術的な確認や広報活動の要素が強かったが、今年から開始される実証実験では、事業化を見据えた各種の確認が行われ、採算性の検証も期待されている。荷物の発送から受け取り、帰着に至る過程のどこまでを自動化し、人員をどこまで最少化できるかについても、事業化を進める上での重要なポイントとなろう。

ドローン物流の事業化を軌道に乗せるには、地域住民との合意を形成することが重要であり、住民、事業者、自治体が一体となった協力体制を敷くことが不可欠といえる。例えば、実際にドローンによる物流が始まると、飛行ルート下に機体や積載物が落下する危険があり、その可能性のある範囲への立ち入りは制限される。事業者、自治体は住民に対し、安全性とともに地域の利便性や活性化を促す手段としてドローン物流が有益であることを強くアピールし、理解を得る必要がある。

さらに、住民、事業者、自治体などの関係者が一堂に会する協議会を設置することで、より前向きに、住民の要望を吸い上げることが可能となる(図)。受益者(荷物の差出人や受取人)として住民にサービスを頻繁に利用してもらうためには、飛行ルートや運航頻度、安全対策などを協議会で確認するだけでは不十分である。地域性や地理的条件によって異なる住民ニーズを適確に把握し、より良いサービスを開発する場として協議会を活用する必要があるだろう。
[図]地域住民との合意形成のフレーム