マンスリーレビュー

2018年10月号数字は語る経済・社会・技術

26%─新製品に興味がない人の割合

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2018.10.1

プラチナ社会センター佐野 紳也

経済・社会・技術

高いラガードの割合

新製品や新サービスの購入にかたくなな姿勢を示す「保守層」攻略が、ますます重要になりつつあるようだ。新製品の普及理論として有名なエベレット・ロジャーズによると、イノベーションの採用者は5カテゴリーに分類 でき、釣り鐘状の正規分布に従うとされる(図)。このうち、レイトマジョリティ(後期多数派)は、大多数が購入したのを見てから続く人々で、ラガード(laggards:遅滞者)とは、lag(遅れ)の派生語で、新製品に関心がなく、最も遅れて消費に動く人々である。当社の「生活者市場予測システム(mif) 」では新製品に対する採用者のカテゴリー(「イノベータ度」)の割合を推計※1している。2018年6月調査結果では、レイトマジョリティが28.9%、ラガードが26.3%を占める。

ロジャーズの示した割合と比較すると、ラガードの割合は10%上回っていることがわかる。ラガードは、所得の伸び悩み、高齢化の進行で増加してきたと考えられる。多くの製品が成熟化している中、未開拓のラガードを攻略することが、規模の経済の面から重要となる。

ラガード向けのマーケティングが必要

「イノベータとアーリーアダプターを合わせて16%まで普及すればあとは自律的に普及する(普及率16%の論理)」など、新製品導入に関するマーケティング論はこれまでもあった。今後はラガードの特徴を踏まえ攻略することも重要となってくる。ラガードは情報収集に消極的で流行や世の中の動きに関心がないため、マス広告やSNSでは情報が十分伝わらない。しかし、身近にいる友人や専門家から、口コミで「新製品を多くの人が利用していること、実際の効果が確実であること」が伝われば、ラガードの気持ちも動きやすいと考えられる。今後、若者の消費離れや高齢者の保守化が進めば、さらにラガード層は増加するだろう。既存のマーケティング論にとらわれない手法の開発が必要となる。

※1:新製品に関し次の5問──「新製品には関心があり、新製品が出ると真っ先に購入したくなる」「新製品に関心があり、効果や効能が期待できれば購入する」「他の人が利用しはじめ、効果が期待できれば購入する」「世の中に普及すれば購入する」「新製品には興味がない」──を聞いている。その回答結果に基づき、イノベーションの採用者カテゴリーを決定している。

[図]イノベーションの採用者の内訳