マンスリーレビュー

2022年3月号

MRIマンスリーレビュー2022年3月号

これからの防災 備えない「備え」

常務執行役員 小川 俊幸
日本時間の1月15日午後1時ごろ発生したトンガの海底火山噴火は、衛星画像で衝撃波が観測されるほどの巨大な規模であった。従来とは様相の大きく異なる津波は、火山活動の空気振動に伴う長距離伝播という特殊な現象によって発生した可能性が指摘されている。災害はいつ、どこで起きてもおかしくない。

南海トラフ地震は今後30年での発生確率が70~80%、首都直下地震は同70%と試算されている。これらの対策に費やせる時間・予算は限られており、国の防災対策の進捗は遅れている。

東日本大震災から10年あまりを経て、防災・危機意識および震災の記憶は徐々に薄れ、風化が進みつつある。従前の対策だけでは私たちの防災意識が高まらないことも認識すべきであろう。

重要なのはまず、データに基づく科学的な想像力に裏打ちされた「備え」を早期に整えることだ。それには費用対効果の高い対策の選択と集中、そして加速が必要になる。加えて、防災のメカニズムが日常に組み込まれていれば、いざという時にも役に立つ。防災を意識しない「備え」、いわば、備えない「備え」である。

私たちの意識と社会構造にどんな「備え」を組み込むか、これからの防災を考える重要な視点である。
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