観光を切り口とする地域経営の実現

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2022.3.1

スマート・リージョン本部宮崎 俊哉

地域コミュニティ・モビリティ

POINT

  • 持続可能な地域経営を実現する鍵は見つかっていない。
  • 観光を切り口とした成功例には4つの共通点がある。
  • 成功を広域展開するためにデータ共有起点のDXを。

持続可能な地域経営の現状

「SDGs未来都市」「スマートシティ構想」など、住み続けられる地域を目指した各種の取り組みが展開されている。こうした取り組みでは地域が参照すべき「ガイドライン」が策定されているが、実際にはどこから着手するか、何を行えばいいかのスタートラインでつまずく例がほとんどである。

総務省が人口減少率などによって指定する過疎地域は、2022年度に885市町村に達する見込み。これは東京23区を除く全国市町村の半分強の規模である。しかし、持続可能な地域経営を実現する鍵は見つかっていない。

観光を切り口とした成功事例

持続可能な地域経営を、観光を切り口に実現した成功例がある。古くは大分県の由布院温泉。観光客を呼ぶのは、地元の生活と農業を守り維持するためである、と数十年前に明確化した。その方針に沿って、旅館が料理人や農家と連携して食事のメニュー開発や地域産品利用に取り組んできた。宿泊客の情報も各旅館で共有し、食事メニューの重複を避けるとともに好みのものを出すなど、地域として質の高いサービスが提供できている。

福島県の土湯温泉では、東日本大震災からの復興にあたり、旅館組合が再生可能エネルギー活用、風評被害の払しょくを通じた地域貢献のほか、ボランティアが宿泊しやすい施設の整備を進めた。地元の高校と連携し、授業の一環として高校生がガイドする自然体験サービスも実現させている。

三重県の鳥羽市では旅館が中心となって、漁業支援や山林維持活動などの情報を、魅力あるコンテンツとして観光客に提供している。地域の事業者と住民が連携した活動が、他の地域での取り組みに関するコンサルティングや留学生・インターンシップの受け入れを行う会社の設立にもつながっている。

広域展開にはDXによる変革が不可欠

これらの成功事例の共通点は次の4つである。

①観光が地域に不可欠との認識を住民らが共有
②最多でも数万人単位からのスモールスタート
③地域の利害関係者が郷土愛に沿って自ら投資
④ボランティアや専門家、観光客らの外力を活用

スモールスタートで成功した地域経営の広域展開には、データ共有を起点としたデジタルトランスフォーメーション(DX)による観光業変革が不可欠だ。ひな型が岐阜県の下呂温泉にある。4つの共通点を満たした上で、地域内の観光施設利用者の属性(居住地、宿泊価格など)を集計・共有・分析する仕組みを構築しており、地域外の事業者とも連携した商品開発などを通じて、来訪者や売り上げの増加に繋げている。

観光を切り口とした成功を、都市経営のためのさまざまな分野・地域のデータやシステムが連携しているIT基盤である「都市OS」構築へと繋げた上で、データを活用したサービスが提供されるスマートシティを目指す。こうした方向感は、地域経営における1つの可能性を拓くだろう。

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