マンスリーレビュー

2022年3月号トピックス2サステナビリティ経済・社会・技術

行動変容を継続させるエコシステム

2022.3.1

未来共創本部大井 修一

サステナビリティ

POINT

  • 社会課題の多くを解決するには生活者の行動変容継続が不可欠。
  • 起こしたい行動変容に関係したエコシステムの設計を提案する。
  • 複数の主体がコレクティブに取り組めば行動変容の継続性が高まる。

社会課題解決の鍵となる「継続的な行動変容」

生活習慣病予防、家庭内での省エネ推進など、社会課題の多くは、最終的に市民の行動が変わらなければ解決しない。そのためには生活者の継続的な行動変容が欠かせない。

行動変容を後押しする方法論としては、人間の心理を活用して、思わず行動を取ってしまう方法を設計するナッジや、ゲームのような楽しい仕掛けで行動誘発を図るゲーミフィケーションがある。これらは昨今、企業のマーケティング活動、政策立案などでも活用されている。

しかし、新型コロナウイルス感染症への対策において緊急事態宣言の人流抑制効果が徐々に減ったように、同じ施策を続けても生活者は慣れが生じて飽きてしまい、効果が減少するのが常である。

行動に関わるエコシステム設計が必要

こうした難題を克服し行動変容を長続きさせるために、生活者に起こしてほしい行動と関係する社会の要素・事業者で構成される仕組みとしてのエコシステム※1構築を提案したい。例えば地球人口の急増による食料不足に備え、現在食べられている肉を代替肉に切り替える行動変容を社会に定着させるには、どうすればよいだろうか。

代替肉が地球環境や人々の健康に寄与するとのメッセージが伝わるだけでは難しいだろう。代替肉が普及しない主因は味や価格とされており、従来の肉食と比べ我慢を強いられていると思った時点で、生活者は代替肉を口にするのを避けるようになってしまうのではないか。

そこで代替肉を既存の肉の代わりではなく新しい食材と位置付け、多様な製品、食料品売り場、外食産業、メディアで構成される「代替肉促進エコシステム」を設計してはどうか。ポイントは①生活者を飽きさせずワクワクさせられるか、②日常生活の中に位置付けられるか、の2点である。

①の具体的なイメージとしては、バラエティに富んだ代替肉の製品が店頭に陳列され、レストランがおいしいメニューを提供し、レシピサイトに調理法が日々投稿されることで楽しさを創出することが考えられる。②に関しては、スーパー、コンビニや社食・給食をはじめ日常生活における食の場面で多くの生活者が目をとめるよう工夫することが考えられる。そうすれば、代替肉を食べる習慣を継続しやすくなるだろう。

社会のこれらの要素を通じて代替肉を食べている日常を想像できるエコシステムが描ければ、行動変容実現に向けた道筋も立てやすいだろう。

コレクティブに行動変容を実現する

このような行動変容を促すには、多様な製品・サービス提供者、販売チャネル、メディアなど、幅広い領域の多くの事業主体の活動が必要になる。

生活者の目線でエコシステムを設計し、その方向に共感した事業主体が同時多発的に取り組みを行うことで、コレクティブ(複合的)に生活者の行動変容が実現される。これにより、社会課題を解決できる可能性は高まるであろう。

※1:自然界の生態系を経済・社会分野に適用した概念。複数の主体・製品・サービスなどがネットワーク全体として価値を提供する。