※1:自給力の複雑な概念を持ち出すまでもなく、「国民一人あたり3.5a」という農地面積を見るだけで、どれだけの農産物が生産できるかの目安になる。一般にコメの生産は、10aあたり9俵程度(1俵=60㎏で540kg)を目安とすることが多い。若干余裕を見て500kg/10aとすると、3.5a全てでコメを作った場合175kgとなる。現状、日本人のコメ麦の一人あたり合計消費量が120kg程度であり、それよりは少し余裕がある。一人あたり2.5aでコメを作り1aで野菜を作る。(家族4人分だとすると10aでコメを作り、4aで野菜を作る。)この規模の農業であれば、なんとか自給自足が可能そうな規模だと言えるだろう。
しかしながら、一人あたり面積が少しでもこれを下回ることになれば、たちまち飢餓につながるような不足になる可能性がある。それは、作況不良で1割2割生産量が減った場合でも同じである。また、飼料用穀物については全く考慮していない。牛・豚などの畜産物は現状のようには食べられないことが前提となる。現状は、それぐらいギリギリの農地しかない、と言えるだろう。一方で、国際貿易の経済性とのバランスにおいて、必要農地をギリギリの水準で持つのがある意味、最も経済合理的である、と考えることもできるだろう。社会全体で、そういう選択をしてきた結果として、現状の農地規模となった、ということが言えるのかもしれない。
※2:食料安全保障について、今回の基本法改正案の第2条では、下記のとおり言及している(赤字)。この赤字部分が、図表3の視点1に直接対応するものである。また、青地部分は、図表3の視点2・3に関連する箇所である。
【食料安全保障の確保】
第二条 食料については、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることに鑑み、将来にわたって、食料安全保障(良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人ひとりがこれを入手できる状態を言う。以下同じ)の確保が図られなければならない。
2 国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給および貿易が不安定な要素を有していることに鑑み、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと併せて安定的な輸入および備蓄の確保を図ることにより行われなければならない。
3 食料の供給は、農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な発展を総合的に図ることを通じ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即して行われなければならない。
(後略)
農林水産省「第213回国会(令和6年 常会)提出法律案」
https://www.maff.go.jp/
※3:民間企業の経営管理では、KGIとKPIを分けて管理することが多い。KGIは「Key Goal Indicator」、KPIは「Key Performance Indicator」の頭文字である。KGIを最終目標とし、そのKGIを達成するための中間目標(プロセス目標)をKPIとして位置づける。プロセス目標としてのKPIが達成できていたとしても、最終目標であるKGIが達成できていなければ本来は意味がない。その場合は、指標の遅効性によって、まもなくKGIも改善していく見通しがあるのか、もしくはKPIが適切に設定されていたのかについて確認し、適宜見直しをしていくことになる。