政府は2024年の通常国会で「食料・農業・農村基本法」の改正を目指している。新基本法の最重要な主題は「食料安全保障」と「農業や食料システムの環境」への対応である。これらの実現には「農業の生産性向上」「農村・地域コミュニティ・農村インフラの維持・活性化」が不可欠であり、最重要主題と合わせた4つが、新基本法の基本理念として位置付けられる見通しである。
※1:「1968年頃、既に旧基本法はレームダック化し、神棚に祭り上げられ、一顧だにされなくなっていた」(谷口信和東京大学名誉教授)。農林統計協会(2023年3月)「日本農業年報68」p.6。
※2:流通業務取扱費、米穀販売・管理業務委託費といった主要食糧の管理に必要な経費。
※3:日本でいえば、重要5品目といわれる「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物」の交渉において、日本の主張が基本的に受け入れられるかたちでFTAが締結されている。
※4:ただし、1970年代の農業者の所得をキャッチアップすることは、兼業農家における非農業所得の上昇によって達成されたものであり、農業政策としては評価されない、という意見も多い。
※5:PSEによる国民負担の分析については、MRIエコノミックレビュー(2023年7月19日)「【提言】食料安全保障の長期ビジョン2050年の主食をどう確保するか」参照。
※6:新基本法の理念は、2つの大きな論点に対応しており、大きな方向性としては妥当である。しかし新基本法改正の足元の議論は、「生産コストの価格転嫁」と「多様な農業人材」に集中している。生産資材コストの上昇により、一部の農業経営体が厳しい経営環境下にあることは事実だが、安易に消費者価格をゆがめるような政策は取るべきではない。
※7:当社では、2040年・2050年に向けた主食穀物の生産のために必要な農地推計を行っている。※5と同様のコラム参照。