意見が分かれる要因は何なのか。また、農業の国民負担の水準は、実際はどの程度なのか。本コラムでは、国際貿易論の共通指標として一般的に用いられる「農業保護水準を示す指標:PSE」の国際比較を通して、日本農業の国民負担の水準についてひもときたい。
※1:例えば、鈴木宣弘氏の「『日本農業は世界一保護されている』はフェイク?」や山下一仁氏の「農業を国民に取り戻すための6個の提言 —食料・農業・農村基本法見直しを機に農政を抜本的に正せ—」などが挙げられる。
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※2:「約3.2万円の負担」とは、国の予算として3.2万円ほどの負担をしているのではなく、「関税などを要因とした商品の高価格化」による負担も含む数値である。つまり、ほぼ同じ輸入品を低価格で購入できるにも関わらず、高価格の国産品を購入しているケースも「約3.2万円の負担」に含まれている。
※3:図2の数値が2018年時点のため、2018年時点の数値を提示した。食料自給率の出典は農林水産省「日本の食料自給率」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html(閲覧日:2023年8月24日)
※4:農業者受取額とは農業粗生産額+直接支払い受取額で算出される。詳しくは、坪田邦夫氏の「東・東南アジア食料農業と農政変容(ノート)」を参照されたい。
※5:日本は、国際間の価格差による所得移転(MPS)の割合が高いので、為替レートにも多分に影響を受けている点に留意が必要(1986年:169円/USドルである一方で、2022年:110円/USドル)。ただし、関税などにより、円高の状況でも、より安い輸入品を利用していないという点で「負担」が大きかったとも解釈できる。
※6:2021年:令和3年度の当初予算で「水田フル活用の促進」に3,050億円であり、PSEの「直接支払い」のうち約38%を占めることを予想される。当初予算額の出所は農林水産省「令和3年度農林水産関係予算の重点事項」
https://www.maff.go.jp/j/budget/
※7:「農業者戸別所得補償制度」で直接支払いが多かった2011年でも、水田関の直接支払いは当初予算で5,604億円(水田活用の所得補償交付金:2,284億円、米の所得補償交付金1,929億円、米価変動補てん交付金(24年度予算計上)1,391)であり、「コメ_MPS」を含めると、水田関連予算で1.7兆円ほどだと推計できる。予算額の出典は農林水産業「平成23年度農林水産関係予算の重点事項」
https://www.maff.go.jp/j/budget/
※8:1986~1988年時点でも転作補助金に関する政策があったため、水田に関する直接支払いは存在する。1986~1988年時点は「コメ_MPS」のみでも2018年よりも大きいため、説明は省略した。
※9:例えば、生産性向上により、同じコストでより大きい水田面積を経営できるようになれば、「国民負担を増やさずに目標面積113万haにつながる」ことになったといえる。