意外に思われるかもしれないが、2021年度における世界全体の小麦やとうもろこしの生産量は、前年度よりも増加したと見られている※1。ロシアに侵攻されたウクライナは世界第5位の小麦輸出国ではあるが実際の輸出量は2,000万トン程度と、世界全体の生産・消費量約8億トンからすればわずかでしかない。それでもこれだけの食料価格高騰が起こっている。
食料価格の高騰による食料危機が意識される状況では、どうしても「量」が注目されがちだが、実際には「流通」の問題である場合が少なくない。食料安全保障上、最も重要な観点は「なるべく多くを国内自給する」ことではなく、「誰からどのように調達しているか」である。
その意味では米国、オーストラリア、カナダ、ブラジルなど国内自給率が200%を超えるような友好国から小麦、とうもろこし、大豆などの主要穀物を輸入している現状を見るかぎり、日本で穀物が急に大きく不足するような事態は考えにくい。
一方で国内に十分な量の食料が存在していたとしても、フードセキュリティ上の問題が発生する場合もある。十分な量があっても、行き届くとは限らないからだ。「食料安全保障」という言葉を使うと、どうしても「有事の対応」のイメージが先に立つ。しかし、国連食糧農業機関(FAO)が定めた本来のフードセキュリティは「いつでも」「誰でも」「栄養だけではなく文化的にも」「食生活が満たされる」ことを目指している。
例えば、「貧困により十分な食料を得られない家庭が増えている」ことも、価格や流通に関するフードセキュリティ上の問題である。
さらに近年、農業経営体を存続させるために、原材料と資材の値上がり分を農産物価格へ適正に転嫁すべし、という議論がでている。しかし、フードセキュリティ全体の課題を解決するには、有事の際への対応や農業経営体の維持といった特定の要素について考えるだけでは足りない。「届け続ける」ためには何が必要なのかを総合的に判断することが不可欠である。
食料価格の高騰による食料危機が意識される状況では、どうしても「量」が注目されがちだが、実際には「流通」の問題である場合が少なくない。食料安全保障上、最も重要な観点は「なるべく多くを国内自給する」ことではなく、「誰からどのように調達しているか」である。
その意味では米国、オーストラリア、カナダ、ブラジルなど国内自給率が200%を超えるような友好国から小麦、とうもろこし、大豆などの主要穀物を輸入している現状を見るかぎり、日本で穀物が急に大きく不足するような事態は考えにくい。
一方で国内に十分な量の食料が存在していたとしても、フードセキュリティ上の問題が発生する場合もある。十分な量があっても、行き届くとは限らないからだ。「食料安全保障」という言葉を使うと、どうしても「有事の対応」のイメージが先に立つ。しかし、国連食糧農業機関(FAO)が定めた本来のフードセキュリティは「いつでも」「誰でも」「栄養だけではなく文化的にも」「食生活が満たされる」ことを目指している。
例えば、「貧困により十分な食料を得られない家庭が増えている」ことも、価格や流通に関するフードセキュリティ上の問題である。
さらに近年、農業経営体を存続させるために、原材料と資材の値上がり分を農産物価格へ適正に転嫁すべし、という議論がでている。しかし、フードセキュリティ全体の課題を解決するには、有事の際への対応や農業経営体の維持といった特定の要素について考えるだけでは足りない。「届け続ける」ためには何が必要なのかを総合的に判断することが不可欠である。
[図] 食料安全保障の考え方