しかし、「だから、現在38%の食料自給率を高めなくてはならない」という議論は、少し短絡的だと言わざるをえない。自給率は高ければ高いほどいいのか? 第二次世界大戦の直後や、江戸時代において、日本の自給率はほぼ100%だったと考えられるが、終戦直後は餓死者がでるような状況であった。江戸時代も、天候不順による大規模な飢饉(ききん)が度々起こる、非常に不安定な時代であったことは言うまでもない。
※1:食料自給率は2021年5月発表の農業白書から引用。最新のデータは2022年5月だが、時系列比較が2022年発表分に記載されていないため、2021年5月版を参照した。
農林水産省「令和2年度 食料・農業・農村白書(令和3年5月25日公表)」
https://www.maff.go.jp/
※2:1965(昭和40)年度と1998(平成10)年度でコメからの摂取カロリーは全体で454kcal、国内自給分で483kcal減少している。平成10年度の総摂取カロリーに対して、それぞれ17%、19%となる。
※3:1960年から2004年まで、農水省は「農業生産指数」を算出して公表していた。農業生産指数とは金額ベースでの生産量を基準年100として示したものであり、1960~64年の農業生産指数(総合)を100とした場合、ピークの1985~89年が134、公表最終時点の2000~2004年が115であった。2020年時点と2004年時点の農業生産額はほぼ横ばいであることから、現時点の農業生産指数は、1960年頃の最も自給率が高かった頃よりも多いと推定できる。
※4:輸入小麦は政府が一元的に輸入して製粉会社などに売り渡す政府売渡(うりわたし)制度を取っており、その差額が国内小麦生産者への補助金の原資となる。詳細は、本連載の第2回以降で紹介したい。
※5:2050年の国内農業生産を半減させないために(MRIマンスリーレビュー、2022年12月)
※6:食料安全保障は「届け続ける」ことが不可欠(MRIマンスリーレビュー、2022年12月)
※7:外務省「食料安全保障に関する研究会(報告書の提出)」
https://www.mofa.go.jp/