決済データは利用者が取引(買い物など)をした履歴データの集合体だが、「何を」「いくつ」買ったかまでの情報は含まれないことがある。購入商品の傾向などを確実に分析する際は加盟店が保有するPOSデータ※1などを組み合わせる必要がある。
スマホの移動データ、行政の統計データまで組み合わせれば、さらに高度な分析も可能になる。しかし法制度面や技術面から改善は容易ではない。実際に加盟店向けの「営業支援情報」や、取引履歴をもとに与信する「トランザクションレンディング※2」など一部の商業利用にとどまっている。取引が発生する個人と事業者の関係構造まで定量化できるのに、いかにももったいない。
例えば、地方自治体が発行するデジタル商品券事業の決済データを分析すれば、地域内の「お金の流れ」が「地理的にどの向きにどれだけ広がっているか」「個人や事業者間の結びつきの強さは業種別に異なるか」——などを可視化できる。
集客力が強く消費の波及効果が大きい「ハブ事業者」の特定も可能だ。地域の消費実態とその波及経路を把握できれば、きめ細かで効果的な商品券設計、地域経済を維持発展させうるまちづくりなど、データに基づく政策実行にもつながる。取引の構造分析は消費者の買い回り行動も可視化する。自店舗の利用者の消費傾向や動線などを定性的、定量的に把握することは、来店予測はもちろん、機会損失(売り逃がし)の回避にも使える。