第6回:Region Ring®を活用した「actfulness」の実現

西宮市における都市型MaaS実証実験の成果を踏まえて

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2022.9.16

イノベーション・サービス開発本部能村聖弘

高田真吾

持続可能な地域経営に向けたDX実践
第1回コラム「地域課題解決に向けたデジタル地域通貨の可能性」では、地域の課題を解決するファクターとして、①域内の経済循環促進、②住民の行動変容・社会活動参加の促進、③福祉サービスの負担軽減・社会参加機会の拡大、の3つを挙げた。今回のコラムでは、このうち②に着目し、地域の住民の行動変容・社会活動参加を促進するアプローチについて、「actfulness」の概念との関係に触れながら解説する。

「actfulness」とは

当社は、人々が多様な行動機会を充足することでウェルビーイングを向上させる「actfulness」の概念を提唱した。「actfulness」の実現のためには、都市や交通の機能がもたらすさまざまなサービスと人々をつなぎ、一人ひとりに応じた多様な行動機会を創出することが求められる。

2021年に当社は、阪急阪神ホールディングス(HD)と共同で、沿線居住者を対象とした都市型MaaSの実証実験(以下、西宮MaaS実証)を実施した。本実証実験は、地域住民の外出促進や地域消費活性化を目的として、地域課題解決型のデジタル地域通貨サービス「Region Ring®」が持つ「ポイントによるインセンティブ付与機能(地域ポイント機能)」を活用したものである。今回の取り組みを通じて、「actfulness」実現に向けた興味深い示唆が得られたため、その内容を紹介する。

西宮MaaS実証での取り組みと成果

実証は、2021年4月21日から8月30日まで兵庫県西宮市において、阪急阪神HDの実証用アプリ「maruGOT(まるごっと)にしのみや」を使用して行った。ここでは、ポイントの獲得・利用に関する「インセンティブによる行動変容」と、外出・移動の各種支援策に関する「移動による行動変容」について、検証を行った。
図表1 阪急阪神沿線における都市型MaaS実証の取り組み内容
図表1 阪急阪神沿線における都市型MaaS実証の取り組み内容
出所:三菱総合研究所
実証実験を通じて、「maruGOTにしのみや」アプリの使い方が、利用する層によって異なることが分かった。例として、40代以上の女性は全ての機能を積極的に利用し、「お出かけアプリ」として活用する傾向がある一方、20~30代のファミリー層の女性は、ポイントの獲得・利用をするための「ポイントアプリ」として活用する傾向がみられた。

また、アプリ内での情報伝達のタイミングについて、ユーザーのリアルタイム位置情報に応じて店舗や施設の案内を行う実験を行ったが、ユーザーがそもそもの行き先を変更し店舗需要を大きく増加させるという結果には至らなかった。このことから、ユーザーの行動変容を促すには、当日その場でのリアルタイムの状況に応じた情報発信よりも、あらかじめユーザーが行き先を計画する段階での情報発信が有効な可能性があるという示唆が得られた。

「actfulness」の実現と地域経済の活性化に向けて

西宮MaaS実証の考察から、「actfulness」の実現、効果を高めるための施策として、以下に示す3点の検討ポイントが明らかになった。

1点目は、インセンティブの付与方法である。外出の際、特定のお店に足繫く通う人もいれば、さまざまなお店に行きたいというニーズをもった人もいる。それぞれの生活スタイルに応じたインセンティブを付与することで、よりユーザーの行動を誘発することができる。また、アプリが提供する経済的価値に敏感に反応する層の行動を誘発するためには、訪問した店舗数に応じてポイントを付与するなど、ポイント起点でのインセンティブ付与が有効と考えられる。

2点目は、情報伝達の方法やタイミングである。アプリ内で、ユーザーごとに個別化したスポット紹介を行うなど情報発信機能を工夫することで、より行動の誘発が見込めると考えられる。また、「maruGOTにしのみや」の実証実験でも明らかになったように、あらかじめユーザーが行き先を計画する段階で情報発信をするなどして、ユーザーに情報を伝達するタイミングについても工夫を忘れないことが重要である。

3点目は、移動のハードルを下げることである。「actfulness」の実現に向けては、目的地までの移動を容易にすることでユーザーの行動を後押しする「移動による行動変容」の視点も欠かすことができない。ユーザーの行動を誘発する仕掛けとしては、ポイントによるインセンティブのみならず、スムーズにつなぐMaaS的な観点からのサービス設計も求められるだろう。

Region Ringでは、コインやポイント、チケット等の電子アセットを企画に応じて配布することで、ユーザーにインセンティブを付与し、行動機会を創出することができる。また、個々人の反応や利用状況を確認しながら施策を打ち出すことが可能な点も、「actfulness」の実現にとって重要である。個々人の「actfulness」の実現が、地域での消費喚起を引き起こし、やがて地域経済の活性化に結びつくだろう。

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